「ごちそうさま」
そう言って野乃野足軽は食卓を立つ。今日の晩ごはんはハンバーグでいつもよりも沢山食べた。というか……
「いつから大食いに目覚めたわけ?」
「いやいや、このくらい男子高校生なら普通だろ?」
「そう……かな?」
そう言って引いてる妹、野乃野小頭は足軽の事を訝しむような目で見てる。確かに実際はこの事実……大食いをしてしまったという事実に野乃野足軽は驚いてた。普段の野乃野足軽はそんなにたくさん食べる方ではない。寧ろ男子高校生を基準に言えば少食かもしれない。
そんな自分が、食べても食べても満足しない感覚に陥るなんて思ってなくて、野乃野足軽には自制が効かなくなってた。
「まあアンタはいつもはあんまり食べないからね。このくらい気持ちよく食べてくれたほうが作る側としては嬉しいわよ」
「そうそう、食べることは良いことなんだよ。お前も過度なダイエットなんてやめろよ。大切なのは体重じゃなくて、体型だろ?」
「うっさい。女子は体重が有ると人権がないのよ」
なんかとんでもないことを言ってる妹のことは置いておいて、野乃野足軽は自室に戻る。そして自室の扉を締めて、そして息を吐いてこういうよ。
「やめろよ。人の体をいじるのは」
(弄ってなんていません。ただ本当に美味しかったから、もっと食べたい――と思っただけです)
普段はそんなに食べない野乃野足軽だが、今日大食いした理由はこれだった。どうやら野乃野足軽の中に入ってる彼女がハンバーグで感動してそれを求めてきたのだ。食事中ずっと「うんまい! 美味しいです! もっともっとください」とか脳内でうるさかった。
そして体を勝手に使って食べまくってた。両手を勝手に弄って、食べだすから驚いた野乃野足軽だ。ナイフやフォークなんて使ったこと無い彼女が主導権を握ると、もうね、野生児のように食べるしかなくて、流石にそれには二人は引いてた。
「こら、足軽! もっと綺麗に食べなさい」
とか母親に怒られた。その時は自身の内で彼女と葛藤してたわけだが、頑として譲らない彼女に野乃野足軽が折れたんだ。このまま彼女に体を明け渡したら、野生児の様に食うのを止められない。だからしょうがないから、自分自身で食べるようにした。
途中からはめっちゃ無理してた野乃野足軽。でも別にお腹がいっぱいになってる感覚はなかった。ただ食べすぎて吐き気が実はずっとしてたというね。
(私はこの世の美味しいものを食べつくします。それが私の使命のような気がします」
「そんなわけないだろ」
なんか変な宣言を彼女に野乃野足軽は冷静に突っ込んだ。