「次から次へと……」
自分は砂獣を聖剣で斬り結びながら、更に魔法を同時展開して剣で届かないところの砂獣も倒していく。ハッキリ言って、ほぼ倒してるのは自分だ。なにせ自分とその他では砂獣を倒せるスピードが違う。
自分が聖剣を一振りするだけで一体……といわず数体は巻き込んでその剣閃で切ることが出来る。その気になれば、この街ごと切り裂くことだって出来るだろう。これでも抑えてる方だ。それに比べて、他の人達はどうかというと、勿論一太刀で砂獣を倒すなんてことはできない。いやもっと言えば砂獣で一対一で勝てるやつなんていない。
元々が砂獣には複数人を当てるのが常識だ。それなのに波ではそれこそ際限なく砂獣が襲いかかってくる。それは防ぎようがないのは当然だ。一体に複数を当ててたら、どう考えても戦力が追いつくわけない。
最近はアズバインバカラやジャルバジャルの軍の人達は自分が施した血浄よりも強力なブースト魔法的な奴のおかげでチラホラと砂獣とタイマンを張れる人物も出てきてる。けどそれも長くは持たない。持ったとしても十分くらいだ。流石に波を耐え忍ぶことが出来るかと言われると、無理だろう。
前よりも持つようにはなってると思う。けどそれでも……厳しい。そんな自分と魔王の手助けを受けたアズバインバカラやジャルバジャルであってもそうなんだ。なんにもしてなくて、古い教会の与えた血浄だけに頼ってるここの兵士達がこれだけの砂獣相手にまともな戦闘にならないのは仕方ないことだ。
ひとえにまだサーザインシャインインラがなくなってないのは自分のおかげだ。これは自慢でもなんでもない。そうとしか言えない。けど実際は既に街はボロボロだ。人が集まってる宮殿と市街の方の教会以外の場所は既に派手に瓦礫と化してる。
(流石に建物まで守りながらは……無理だったな)
悪いとは思ったが、命があるだけありがたいと思ってもらおう。全力を出せば、実際は自分の力で町中の砂獣たちを町の外へと押し出すことも可能だろう。いや、それこそあの黄金の鬼以外は滅ぼせると思ってる。でも、まだなにかジゼロワン殿は動いてる。ここの人達が動けるようにするなにか……それが教会の切り札だとしても、このままただ救われるだけよりは彼ら自身の手によって少しでなにかできた……というその実績が必要だと思う。
もしもそれがとても小さな一歩だとしても、全て自分がやったらそれは一歩にもならないから。そんな事を思ってると通信が届く。
『まだ生き残りはいますか?』
「もちろん、ちゃんと居ますよ」
『ならばよし。これから武器を持ち込みます。それを持たせてサーザインシャインインラの人にも戦ってもらいましょう』
「ですが、そんな勇気がある人がいるかどうか……」
『まずは軍の人にもたせますよ。そこでこの武器の力を見せます。それなら砂獣に復讐できると飛びつく人もいるでしょう』
「それほどの武器ですか?」
『試してはないですが、それくらいはきっと』
それならばもしかしたらサーザインシャインインラの人々で巻き返せるかもしれない。少し自分も楽しみになった。