沢山のドローンたちが集まってきた。そして複数で空中に魔法陣を描く。それが完成すると光り輝き、そこから大量に武器がガシャガシャと落ちてきた。運ぶのが面倒だからって転送魔法を使って一気に送ったらしい。使い方が豪快だな……と思った。けどらしくもある。
それにおもったよりも多い。これなら全然軍の人達には十分足りるし、ジゼロワン殿が普通の人達にも持たせようとしてるのもわかる。切り札……とか言ってたから、なにやら伝説の武器的な物が一つある……とかだと思ってたが、どうやらそうじゃなかったらしい。でもこれはある意味で嬉しい誤算なのかもしれない。
これだけの強力な武器……確かにここの人達を立ち上がらせて戦力とするには十分……かはどうかわからないが、これだけあれば、盛り返すことはできる。
「これは一体……」
生き残った軍の人……その1番偉くて頑張ってる人が落ちてきた武器を見てそう漏らした。まずは彼しかいないだろう。先陣を切るのは彼が相応しい。というか他は既に砂獣に怯えきってる。彼の部下たちは頑張ってたが、負傷具合が酷い。回復魔法を集中的に掛けて死なせてないが……死なせてないだけだ。ここで彼があの武器を手にとって、少しでも砂獣を引き受けてくれたら、その分できた余裕で彼らを回復させることも出来るだろう。
自分は元々回復魔法はそれほど得意じゃなかった。なにせ元の世界ではちゃんとヒーラーと呼べる担当の人が居たからだ。自分がやる必要がなかった……って感じだ。けどこの世界にきて、自分はよく回復を担当してる。
なにせ回復魔法を使えるのは自分しかいない。魔王のやつは回復魔法なんて使わなくても再生するよなやつだからな。それに力を攻撃に全振りしてるようなやつである。回復のかの文字もない。ジゼロワン殿も回復できるが、魔法的な回復はそこまででもなかった。だが、どうやら薬品的な物で回復するすべはあるらしい。
それはかなり強力でどんな重症も飲めば一発で治るようなものらしいが、何分そんなに数はないということだ。それだけの回復力がある薬とも慣れば貴重な素材が必要だろうし仕方ないだろう。とりあえず彼の部下たちを救うためにも彼には武器を取ってもらわないと。
このサーザインシャインインラで1番の実力者である彼ならあの武器で砂獣に善戦できる筈だ。逆にいうと、彼が善戦できないのであれば、あの武器達はほぼ使えないってことに……いや、今はそんな事を考えてる場合じゃない。
「その武器を取ってください！ 今までよりもより強力な武器のはずです！！」
そんな事をいきなり言われても普通はためらったりするだろう。「ほんとうか？」くらいは思うのが普通だ。けど彼は「わかりました！！」と言ってすぐに剣を取った。その瞬間、変化はすぐに起こった。
「これは……凄い！ 力がみなぎってくる！！」
なにやら黄金のオーラがでて、彼の髪が金髪になって逆だった。パワーアップしてるという表現か？ それにしてはあからさまというか……でも強そうになってるの確かだ。あのオーラはきっと敵の攻撃を防ぐ役割も有るんじゃないだろうか？
「これなら……やれる！！」
そういった瞬間、彼は駆け出す。そのスピードはさっきまでの疲労感たっぷりの速度じゃない。寧ろ今までで一番早い。そして一振りすると、周囲を巻き込んで砂獣を薙ぎ払う。
