男の人が走る。私が犠牲にしたドローンに心を打たれたのかわかんないが、その行動はありがたい。私が犠牲にしたドローンで砂獣は今動けない。その隙きをついてくれた。良い判断力である。大丈夫、十分に間に合う。もしも危なくなったら、この機体も使って助けてあげよう。
動く者を追う習性でもあるのか、蟻の砂獣は横たわってる少女から走ってる彼を観てる。そしてフラフラとだが、その体を向けようとしてる。
(危ない危ない)
私はそっと動いて、ステルスで姿を隠してドローンで横たわってる少女を移動させる。いや、だって砂獣がふらついてるからさ、うっかりふまれたら困る。そんなので死んじゃったら可哀想じゃん。
ただの少女なんて、砂獣の脚の圧力だけでその体を貫かれるよ。だから万が一を危惧して避けさせた。そしてその隙きに彼は私が出した武器にたどり着いた。その中の一つを特に何も考えずに取ったみたいだ。色々な武器があったけど、大体は剣だったから、彼もそれを引き当てたらしい。見た目的には、そこまで奇抜な形はしてない。けど、どれも曲線的な形をしてる。まあこの世界直剣の方が少ないからね。
半円だったり、波打ってたり。彼が取ったのは波打った剣だ。そして刀身がなんか青い。綺麗な剣だ。まあけど過度な装飾がされてるってわけでもないから、普通の部類だとは思う。ちょっと綺麗な剣……みたいなね。まあけど手に取った彼はそんなのを観てなんて無いだろう。
なにせすぐ後ろに砂獣が迫ってる。
「う、うおおおおおおおおおおおお!!」
振り返りざま、がむしゃらに彼は剣を横になぐ。それによって彼はその剣で砂獣の6つ有る脚の一つを切った。
「え?」
脚の一つを切られた砂獣は汚い悲鳴をあげる。けど、倒れたりはしない。砂獣は頑丈だからね。バラバラくらいにしないと安心は出来ない。なにせ生命ではない。首一つになっても食い殺そうとしてくるなんてザラである。
だから脚を切られても、僅かに痛がるだけで、体を残りの脚で支えてその口の牙を向けてくる。
「うわぁ! うわぁ!! うわぁぁぁぁぁぁ!! 来るなぁぁぁぁ!!」
ただがむしゃらに剣を振り回す彼。すると次の瞬間、迫ってた砂獣の頭がバラバラになって床を汚した。
「え? えええええええええええええええええ!?」
砂獣を倒した彼がそんな悲鳴をあげた。まるで信じられないとでも言うように。まあけどそれも仕方ないだってさっきの攻撃で砂獣の体を切り刻めるなんて彼自身も思ってなかったんだろう。なにせ腰はへっぴり腰だったし、腕は伸び切ってた。体全体どころか、腕だけを振り回すだけの力なんて全然込めれてなかったら剣だった。
けど……現実にはばらばらになった砂獣の死骸が転がってる。