「私だって……」
そう言って彼女は走っていく。今度こそは転ばまいとしてか、彼女はチラチラとちゃんと足元をみてる。実際今はたくさんの瓦礫があるからね。危ないことは確かだ。そこらじゅうで砂獣が暴れまわってサーザインシャインインラの街並みは崩壊してると言っていい。
あの綺麗だったサーザインシャインインラが……とかきっと思ってるんだろうが、私的にはそこまで思い入れもないから、壊れちゃったな……程度の認識だ。けど、ここで暮らしてた彼らにとってはそうじゃないのはわかる。
「あぶねえ!」
彼女の後から追いかけてきてた男性が足元を見てた彼女に襲いかかろうとしてた砂獣を切った。
「わ、私が!!」
「わーてるよ。この武器なら多分女でも子供でもやれるだろう。だから落ち着け。しっかり奴らをみて、武器を振るうだけでいいんだ。力もいらねえ。だからまずは落ち着け」
なんと、さっきまで震えてたとは思えないようなアドバイスをしてる男性。どうやら砂獣を倒すうちに自信がついたらしい。けど、翌々考えたら『女は引っ込んでろ!!』とか言わなかっただけ良いやつなんだろう。それにその言動から、自分の力……とかと勘違いしてないもんね。アホな奴だと、武器の力を自分の力と思って偉そうにしだす……とかありえそうだもんね。
彼女にアドバイスした人は前に立ち、その背中で安心させながら、前を見据えてる。彼が見据えてる前方には新たな砂獣がやってきてる。どうやらあれをやらせる気らしい。
でもその時だった。
「うおらぁ!!」
といって別のやつが飛び出して蟻型の砂獣を一刀両断した。
「おい!」
「ああ? 砂獣をぶっ殺すのは早いもの勝ち――だろ? 指図なんて受けねえぜ。これがあれば、コイツラを殺しまくれるんだからな!!」
なんか早くも力に酔ってるやつが出てきてる。ああいうやつには元の呪いが掛かってた武器を渡しておいたほうが良かったかもしれないね。まあもう一つも呪いなんて物が残ってる武器なんてないんだけどね。ただ純粋に使用者を超強化する武器でしか無いからね。そして武器は武器なのだ。使用者によってその価値は変わってしまう。
殺戮を繰り返す魔剣にもなれば、世界を救う聖剣にだってなる。そしてあいつはその力に酔いしれて、沢山殺す事に喜びを感じてしまってる。彼女のために砂獣をよこしても、さっさとあいつが倒してしまうよ。
(こうなったら……勇者、もっと沢山、見逃してください)
(良いんですか?)
(生きが良いのが居るから大丈夫でしょう)
それなりに戦ってきた人達はもう砂獣に対するおそれはなく、武器に信頼をおいてきてる。それにあのアホが暴れ過ぎるから、一体一体送り込んでたんじゃ、何時まで経って彼女が戦えない。ここはそれなりの砂獣をよこして、彼女が相手できる砂獣を確保しないとね。
そしてすぐに複数の足音が迫ってくる。そして数体の蟻型の砂獣に更には今まで彼らが相手にしてなかったフンコロガシみたいな砂獣もやってきた。