「うーん実際、上層部の奴らなんてのはいなくなって問題ないような……」
どうせ腐ってるからね。上層部の奴らの切り札の大砲はどんどんと沈黙してる。実際エリート様たちが動かしていた訳じゃなく、自動で繰り返し発射してた訳だから奴らが逃げたとしても大砲は動き続ける。けど弾幕が薄くなったら大砲を目指してまずは砂獣が迫ってくるわけで……そして次々と大砲が壊されて、そうなると更に大砲をくぐり抜ける砂獣が多くなる。
宮殿はオアシスの中央にあるから周囲は水に囲まれてる。だからこそ砂獣たちもここに辿り着くまで時間がかかった。橋は二箇所しかなかったしね。でも一度島まで辿り着くともうそんなの関係ない。なにせそうなると、ただそこにいる人たちには逃げ場がないってことだ。きっと偉い奴しか知らないような脱出ゲートみたいなのがあるような気がするが、それで助かるのなんてほんの少しだろう。それになんとかあそこを脱出できたとしても、サーザインシャインインラの周囲にはまだまだ無数の砂獣がいる。
逃げる……なんて選択肢は実は取りようがない。波を退けるしか生き残る術なんてないんだ。
「うわー!!」「きゃああああ!!」
そんな声が宮殿にこだまする。綺麗な白とブルーの宮殿が砂獣に蹂躙されていく。壁は崩れて、高そうな内装品もドッカンガッシャンと破片へと変わる。そして人間も……ね。エリートさんたちは何もできずに既に肉塊になってる。
本当に何もできない奴らだった。
「こいつらは映像を見てないの?」
私が持ってきた武器ならそこらの一般人でも一応砂獣に対抗できるのにね。それをやってる市街の方の皆さんの映像だってこっちでも流してる。けどここの奴らは頑なに武器を取ろうとはしないのだ。そもそもがこの宮殿に今いる奴らはこの街でも上の奴らで、選民思想が染み付いてるせいなのかな? それか……
「まさか武器のリスクを知ってるとか?」
この街のトップとかならあの武器の元のリスクを知ってても実はおかしくないかもしれない。でも、ここまで追い込まれてて、誰も手に取らないってのもおかしい気はする。だって流石にここにいる偉い奴ら全員が知ってる……とは思えないからだ。
このまま死ぬよりはそれでも一矢報いるとかしたいって思わないのかねこの人たちは。
「まあけど、ここにはヌメリアさんとかおじさんもいるからね」
二人は見捨てるわけにはいかない。けど彼らには既に武器を渡してるし、私はちゃんと説明もしてる。そしておじさんについてきた幾人かの役人たちも武器を持ってるからアリ型の砂獣程度なら遅れは取らないだろう。彼らはきっと大丈夫。
なら……ここサーザインシャインインラで一番偉いやつの所にでも行こうかな? 既に位置はわかってる。助けることになるのか、それとも最後の挨拶になるのかはそいつ次第だけどね。