「うわー」
弾けてしまった砂獣をみて、そんな感想が出てくる。可哀想とかはない。なにせ砂獣だ。そんな思いはない。ただもう少し粘ってくれても……とは思った。これはそこらの砂獣を一体一体投げる……とかでは全然間に合わないし、鬼のエネルギーを削るってことはできそうもない。少なくとも一番多い蟻型の砂獣では難しいって事がわかった。
だがこのままでは世界がどうなってしまうのか……少なくともこのまま暴れられると、一番近いサーザインシャインインラは一番被害を受けるのは確実だ。どうにか誘導できればいいんだが…… 聖銃でいくら撃ったとしても、鬼はこっちに意識を向けない。
破壊衝動だけが前面に出てて、他はどこかに行ってるらしい。厄介なのはこっちが最大の威力を込めたとしても、そこまであの鬼には効果がないって事だ。
「自分自身を通さずに力を使う……ってことはできないか?」
はっきり言って砂獣に鬼の力を吸ってもらうって計画は速攻で破綻してしまったわけだ。でもノアやユグドラシルシステムを使っての力の変換は解析も進んである程度できるようになってる。
問題は完璧でないせいで、今鬼が暴れてるような状態に下手したら自分までもなるかもしれないって事だ。だからこそ、それを避けるためにも、鬼の力を砂獣へ……と思ったわけなんだけどな。そもそもが砂獣に無理やり押し込むのなら、変換なんて作業も必要ではなくなって楽なんだ。
けど自分自身が使うとなると体内に流さなくても、変換は必要だ。なにせそもそも大元が違う……それを操るとなるとある程度自分に寄せることが必要なのは当然だろう。だがユグドラシルシステムもノアの変換も自分自身の中にあるわけで……ようは自分のこの体こそが濾過に必要なフィルターの役目を担ってると言っていい。
それなのに自身を通さないとなると……やっぱりかなり難しいかもしれない。
(一時的に変換の力を別の物に持たせるというのはどうっすか?)
「できるのか?」
(かなり簡易的な物になるっすけど……負荷を考えないのならいけるっす)
「それってつまりは……そういう事だよな?」
(主の考えてる通りっすよ)
悩んでる暇はない。自分はさらに聖剣を変化させて鞭のようにした。一体一体を確保するなんて時間がかかりすぎる。だから一気にこれで数十? いや数百体を確保する。そしてそいつらにノアが作った術式を組み込む。さっきまではただ単に砂獣を吸引機にしてた訳だが、そこに一つの術式を加える。
でも結果は変わらない。まともた百体くらいの砂獣は鬼の力を吸収したら速攻で弾け飛ぶ。でも……その弾け飛んだ砂獣から今度はある程度変換された力が出される。もちろんその中の8割は変換できない元の鬼の力だ。
でも2割は自分でも操れる力になってる。実際コストやら効率やらそれを考えると、これは決してうまい方法じゃないだろう。けどいくらでも砂獣は波の間には生まれてきて、蟻型の砂獣なんてそれこそいくらでもいる。なら遠慮なんていらない。
2割ずつでも確実に自分のものにしていけば、その力を束ねれば、鬼にとってもきつい一撃を入れる事ができる可能性はある。