uenoutaの日記

好きなものを描いたり、買ったものを紹介していきます。

ある日、超能力に目覚めた件 79P

「ここまでか……」

 

 かなり上にきた野々野足軽。その眼下は暗く、逆に遠くの都会の光の方がよく見えるっていうね。一体高度どのくらいなのだろうか? よくわかってない。けどかなり高いのは確実だろう。そこらの山になんか負けない高度だ。

 

「これで自由自在に動ければ……な」

 

 石とか小物ならまだ空中で動かす事もできる野々野足軽だが、自分自身を動かすってのは難しい。地面に立つってことは誰もができることだろう。どうやって立ってるのか……それを疑問に思う人間はいない。本能で立てるからだ。それと同じように鳥は自然に飛んでんるんだろう。

 なにせ鳥は飛ぶ生き物だからだ。でも人は飛べない。それはそういう生き物だからだ。人間には翼はない。浮くことは簡単にできる。そもそもが野々野足軽の場合は覚醒時に浮いた。浮いて上昇して行った。そのイメージが強いから浮くこと自体はなんかできる。

 簡単に。でも力を使えるようになっていってわかったのは浮く事と自由に空を飛ぶのは違うのだ。それに外にいるって事も重要な要素として関係してくる。何を言ってるんだと思うかもしれないが、部屋の中で移動するのと外で移動するのとでは条件が違うということだ。

 そして一番影響あるのはそれはやはり風である。地に足ついてる時はそれこそ強風でも吹かないと意識なんてしないだろう。けど空では違う。そもそもが地に足ついてないから不安定なのだ。そして何と言っても浮いてるだけで、何も推進力がない場合は僅かな風に流される。それは別に風に乗ってる訳じゃない。体の体積に風が当たって押されてるわけだ。

 そうなると推進力がないからどうにもならないから、そもそもが風に当たらないようにしないとダメで、周囲を力の壁で覆う必要があるっていうね。でもただの壁では壁が押されるからここにも工夫が……というふうになんやかんやが必要でようやくこの高さまで来れるまでになった。

 ここから大気圏に突入とかになったらさらにまだまだ色々な保護が必要だろう。だからハードルはまだまだ高い。今回は挑戦しないが……いつか……その思いが野々野足軽にはある。

 

「ふう……そろそろ力もまずいし戻るか」

 

 この場所はとても気持ちいいが……いつまでも入れる場所でもない。リラックスが出てきるわけでもないからだ。それに力はこうやってる間にも消耗してる。複合的な力の使い方を常にしてるから、アースから力を間借りしたとしてもどんどんと減っていく。それだけ体を上昇させるのは大変だ。これがさらに自由自在に飛ぶと慣れば……さらに力を膨大に消費することになるだろうと野々野足軽は思ってる。

 なにせ自由自在に飛ぶには推進力が必要だ。つまりは飛行機で言うところのエンジンである。それを自分だけで起こすとなる、力を大量に消費するのは目に見えてる。けど空を自由自在に飛ぶのも夢である。

 だから野々野足軽は頑張るつもりだ。

 

(ゆっくり降りるのですか?)

「いや、今日は急な停止に挑戦する。万が一の時は頼むぞ」

(はいはい)

 

 アースにそう頼んで野々野足軽は力を解除する。すると空に止まってた体は重力に従って降り始める。どんどんと自身の鼓動が早くなっていくのがわかる。なにせ失敗したら……

 

(いや、考えるな。ただ停止するときのイメージをしっかり作っておくことが大事だ)

 

 空から落ちながらなんとか冷静さを保つ。今回は突如こうなったわけじゃない。自分からこの状況を作ってるから混乱はしない。野々野足軽は上を向いてた体を捻って下を向く。どんどんと近づいてくる屋根が見える。本当ならパラシュートを開かないと着地なんてできないだろう。けどそんなものはない。だから力を使う。

 それにこれができたら学校でも3階から飛び降りるってことができる。壁を這って降りるのは誰かに見られる可能性がないわけじゃない。それよりも飛び降りならそれこそ一瞬だ。リスクは明らかに減るだろう。

 そのためにも成功させたい。まずは自分の体を力で覆う。これを一瞬でできるように意識する。浮くとなると、それこそ細胞の一つ一つを意識するような…… いつもよりも体の全てに力を行き渡らせないといけないから準備がちょっと大変だ。けどそれを息をするようにできないとダメだろう。

 とりあえず今は数秒かかったが、まだいつもよりは早い方だ。けどこの星には重力があって、位置エネルギーと運動エネルギーというものがある。上に上がるときは重力に半発してるだけでいい訳だが、今は勢いというものがついてる。ただ浮くだけの力ではこの勢いは止まらない。

 なのでこの勢いを殺さないといけない。どうやるか……色々と考えた。力を地面に撃って、その衝撃で逆のエネルギーを発生させて勢いを殺すとかを野々野足軽は考えてもいた。

 でもそれだと音とか衝撃とかが起きる。それは困る。なにせ学校で見つかるリスクが増えてしまう。なので却下だ。なので野々野足軽は自身の力……この浮遊の力を周囲に広げることを考えた。はっきり言えば、野々野足軽はどうして自分が浮いてるのかよくわかってない。

 力にそういう意志を乗せて、体を覆えば浮く……という認識があるだけだ。そしてそれで石とか、物も浮かせる。そして石とかを浮かしてる時に気づいた。これって風が強い時にものを操るのってどうなのか? って。結果的にはいつもの感覚で操った石を扇風機にとかに向かって飛ばすのは大変だった。

 けど力を拡張させると、風の影響を軽減できた。つまりはその応用である。でも小石と比べて野々野足軽は60キロくらいはある。となるとその力はめっちゃかかる。こういう時、何が大切かというと出し惜しみしないこと……そしてイメージである。これまでの訓練で野々野足軽はそれを実感してた。

 どんどんと迫る屋根。理想としては止まる位置は足が届くくらいがいい。だからそこまで我慢する。けどそれはめっちゃ怖いことだろう。なにせ屋根とはそれこそ目と鼻の先なのだ。嫌でも自分の中の想像で屋根とぶつかるイメージが浮かんでくる。

 でもそれを必死に押し殺して−−

 

(今だ!!)

 

 −−野々野足軽は力を周囲にまで拡張させる。