次々に砂獣を犠牲にしてしまったせいか……なんか砂から出てくる砂獣が速攻で逃げるようになってる。逃げると言っても、波の最中はその目標から離れるってことはできないのか、どうあってもサーザインシャインインラへと向かっていく訳だが、出てきた瞬間、鬼とかから離れるように広がっていく。それもなかなかに必死な感じで、砂の中にいるときにすでに離れようとしてるのがなかなかに……ね。
哀れだった。けど、逃すわけにはいかない。だって砂獣を使わないと、リスクなしで鬼のエネルギーを自分のものにできない。そこそこそ貯まってきてるが……まだ足りない。
実は時間が経てば勝手に鬼は正気になるのか? とか思ったが、なんかどんどんと鬼は砂に埋まって行ってる。その大きすぎる力で地団駄を踏んでたんだからそうなるのは当然だが……一体何をしたいのか破壊衝動は砂にぶつけて解消されるのだろうか? まあ実際、下手にサーザインシャインインラへと行ってくれなくてよかったわけだが……でも違和感がある。
流石に何かおかしいような……鬼から離れて行こうとする砂獣を鞭のようにした武器で確保してエネルギーにしつつ、自分は鬼がどんどん掘り進めてる穴を見る。一心不乱に鬼は底を目指してるように見えなくもない。でも一体砂の底に何が? 考えられるのは埋まった街とかか?
でも……それでどうなる? いやかつて砂の下に埋まった街に回収されてなかった都市核がある……ということはある。それはとても貴重でお宝と言えると思う。けど、それを鬼が求めるか? と言えばうーんといわざる得ない。なにせ鬼ははっきりと言ってその身で十分強大なエネルギーを内包してる。
その強大さは都市核よりも上だ。少なくともあの黄金の鬼の力は都市核よりも大きい。
(自身よりも小さな力なんて求めないよな)
それは今更ってやつだろう。今更それを得て、どうする? って感じだ。だからそういうのじゃないだろう。じゃあ何か? 最初はそれこそ感情のコンフリクトが起こって暴走してるだけだと思ったが、それだとしても、こんなに長く続くだろうか? 怒りとかはなかなか継続するのが難しい感情だ。そもそも感情的には薄い鬼どもだ。怒りで頭がいっぱいになる……ってのが長く続くと思わない。ならどうして砂の中に潜ってるのか。
「破壊」とか「暴れたい」とかそれならこんな砂じゃなくて、もっとぶつけるのにいいようなものは地表にこそあったはず。でも破壊は教会の奴が流したやつで「暴れたい」ってのがノアが読み取ったあの黄金の鬼の意志だったはず。
これがその発現なのか? そう思ってると何と世界全体が揺れ出した。
「なんだ?」
激しく世界が揺れている。見えてる範囲だけじゃないだろう。そしてその中心にあるのはやはりあの鬼……鬼を中心に円状にその穴が広がっていく。それはさながら蟻地獄のような……いや蟻地獄だろう。そしてその砂の中にはたくさんの砂獣が見える。
生まれてきたばかりの砂獣だろう。そいつらはその蟻地獄から抜け出そうとしてるが、それは叶わない。なにせ蟻地獄だからな。
何やら背中だけを中心から出してた鬼だが、何やらを持って上半身を抜き出した。
「があああああああああ!!」
という声が響く。その手にはなんと表現していいのか……何やら薄い色した液体? なのかなんなのか……おかしなものを握ってる。そしてそれは砂の中へと続いてるようだった。