「ええー彼女? まあほら、これって別に浮気とかじゃないからさ。それにシキはこんな事で目くじら立てる様な奴じゃないよ。なにせ俺たちはそんじょそこらの軽い間柄じゃないからな。受け入れてくれてるんだよ」
「ええーなにそれー」
「うけるー」
そう言って語ってる山田先輩はたしかにイケメンである。彼はバスケ部の部長で校内でイケメンドップスリーは入るだろう大人気の先輩だ。どうやら他校にもそのファンが居るとかいないとか。彼はあんな事を言ってるが、別に軽い奴……とかではならしい。あれだけモテモテなら寄ってくる女どもを食っては捨て、食っては捨て……とかしてそうだが、そういう話は聞こえてこない。
そういう話が広がらないようにしてるのか、それとも本当に良いやつなのかは交流がない野乃野足軽や桶狭間忠国にはわかりようもないことだ。でもこうやって傍から見てると、あれが平賀式部の彼氏……と言ってるのは我慢ならない――ってのが二人の共通認識だった。けど表立って何かが言えるわけはない。
(力を使って何かできないか?)
(腕力では負けない)
とか二人は思ってた。とりあえず野乃野足軽は力を使って山田先輩の足の動きをちょっと悪くしてみる。具体的には地面に躓かせた。ちょっとした意地悪である。
「うおっ!?」
「きゃーちょっと亮。どこに埋もれてのよ」
「こっちでも良かったのに。巨乳の方に行くとは。わざとか?」
「ち、違うっての。なんかいきなり足が……」
「いや、いいからさっさと退いてよ。いつまで人の胸に顔を埋めてるわけ?」
「良い胸してたからつい」
「ふん……ひっぱたくよ?」
そんな事を言いながらも山田先輩に胸を使われてるその女の先輩もなんかまんざらでもなさそうな……てか――
(なんでラッキースケベになってるんだよ!? それになんで許されてるの? イケメンだからか!!)
野乃野足軽はイケメン無罪を心から憎んだ。別にあんな事を演出したかったわけじゃない。ただちょっとしたイジワルだったんだ。それであのイケメンな先輩がちょっとした恥をかけば……と思ってた野乃野足軽だ。
けどどうやらあの人は世界に愛されているらしい。悔しい……と思った。
「許せないな……」
「そうですね」
なんかついついボソッと感情のままに出た言葉に桶狭間忠国が同意した。なんの文脈もなくそれを呟いた野乃野足軽だが、どうやら桶狭間忠国も一連の出来事をみて、イケメン無罪なことに腹を立ててたらしい。
(自分的には他の女なんてどうでもいいが、あんな誰にでも手を出してる奴が平賀さんにふさわしい訳はない。虚言だとしても、その行いは万死に値する)
そう思ってて、今日の夜にでも闇討ちをどう決行しようか……と桶狭間忠国は考えてた。