私の頭には今、さまざまな情報が流れては出力されている。そもそもが……である。私もすでに何度も脳を拡張してるのだ。継ぎ足してるわけじゃないよ。私の頭は平均的だし、どっちかというと小顔である。頭が異様にでかい宇宙人スタイルにはなってない。
まあだからこそ、どこを拡張してるのかは謎である。でもG-01をアップグレードするたびに、私だってアップグレードしないとじゃん。そうしないと外側は立派になってるが、中身がスカスカ……なんてことになりかねない。いや、実際は外側よりも中身を重視してG-01アップグレードしてる。
けどそれを使う私自身もアップグレードしないと、上がった性能に振り回されることになる。色々とG-01の基礎能力をアップさせてるわけだけど、早く動けるようになったり、周囲の状況をよりわかるようになったりとしたら、もちろんだけど、私だってそれを理解しないとダメじゃん。
いや、G-01は優秀だからある程度は色々と配慮してくれる。けどさ、やっぱりG-01を操縦してるのは私なのだ。そんな私がダメダメだとどんなに優秀で性能がいいG-01でもその性能を発揮できずに終わってしまうだろう。だからこそ、私のアップグレードも必要なのだ。
だからと言って私は機械じゃない。まあ人間でもないみたいだけど……プチュオクミという謎の存在だが、一応体は機械ではないのは証明済だ。いや、血を流したとかないけど、心音はあるし、出すものは出すし……この体は生命活動ってやつをしてるだろう。
けどなぜにAIみたいな高度な物も作り出せるこの創造主たちは不完全で、そんなに優秀でもない私のような生命にG-01を預けたのだろうか? それがある意味で一番謎だ。もしかしたら預けたというのが間違いって可能性もあるけど……取り敢えずは私も成長しないとG-01を活かせないから私自身も脳の拡張という荒技で思考力やらなんやらをあげてるのだ。
これがどういう原理かなんてのは知らない。知らないけど、実際G-01の膨大なよくわからん言語のマニュアルを読むスピードは上がってる。こうやって処理されるデータを読み込む速度だって上がってるよ。きっと側から見たら私の目は怖いくらいに世話しわなく動いてるだろう。
「それで本当に読めてるの?」
って言いたくなるくらいだと思う。そもそもが私の周囲に展開してる仮装モニターに表示されてる文字列だってアホみたいに早く動いてるのだ。それを処理できてるのだから、私の頭の能力は確実に上がってるだろう。
なにせ前は一つの画面に釘付けになってようやく読み解ける……という物だったのに、今やこれだけ高速でスクロールされてても私にはその意味を理解することができている。もちろん、G-01側である程度情報というのは整理されてたりする。私が読み解きやすいようにね。
でも前はそれを理解する頭も処理能力もなかったのだ。それに比べたらとてつもない進歩をしてると言っていい。
「よし……」
私は様々な情報からいくつかを判断して次の行動を決定した。まずはいろいろな物資を絶賛生産中の施設から簡単な板を作らせてドローンに運ばせる。それには最低限の技術を組み込んでる。まあ簡単にいうとただの移送技術見たいな? パイプが接続されてるわけじゃないが、同じ機能がある板に荷物を転送させることができるという代物だ。
A地点の物資をB地点にある板まで一瞬で運ぶとかいう、そんな設置型の転送装置みたいなものだ。応用は効かない。
これはAからBにしか転送できないが、そのぶん簡単に製造できるし、転送容量もでかい。そもそもが触れた瞬間に転送されるから板自体はその機能を組み込める最小限の薄さとかにしても問題はない。
これはこのプニプニを受け止める受け皿だ。そしてそれを転送するB地点を宵と明の間に落としておけば、こっちに落ちてるプニプニを元の場所に帰せるといった戦法である。すでに落ちた分? それは知らない。まあ大丈夫でしょう。
これ以上落ちなければ世界が溺れることはない。そして明と宵に隔たるこのプニプニも、ネナンちゃんと誤認させることで影響されない術を見つけたわけで……あとはそれを安定的にG-01に纏わせることが必要だ。
でもこれってリスクも高い。G-01の力は膨大で、その全てをネナンちゃんへと寄せるのは現実的じゃないし、エネルギーの無駄だ。なのでこのプニプニにそっくりそのまま、ネナンちゃんだと誤認させるために、ネナンちゃんの人型をエネルギーで作成。そしてそれを纏うことにした。どうやらプニプニはサイズ感は気にしないらしいからこれでいけるだろう。
ということでG-01は全身を明と宵の間の空間に投げ出した。