uenoutaの日記

好きなものを描いたり、買ったものを紹介していきます。

ある日、超能力に目覚めた件 122P

「朝倉、わかってくれたか?」

 

 なんか期待してるような眼差しの山田奏。一体何をこれまでの流れで期待できるのか? と野乃野足軽は思ってる。もしかしたらやっぱり山田奏は否定してたが、打たれたいのでは? とかちょっと思う。だってそんな眼差しだ。

 確かにタイプは違うが、朝倉静香だって整った顔をしてる。格好と見た目で派手なギャル見えるが、美人なのは間違いない。というか、元が良いからこそ、内側から自信があるタイプなんだと思う。

 そんな朝倉静香が打ってくれたら、ある意味でそこそこの男性は嬉しいかもしれない。その強さ……にもよるかもしれないけど。実際朝倉静香なら思いっきり打ってそしてその後に冷え切った瞳で「このゴミ」とか言いそうな……そんな感じはある。

 流石に山田奏はそんなことを期待してるわけじゃなさそうだが……ある意味で見てるだけの野乃野足軽はそこまでやってくれないかな? とか期待してた。

 

「わかったわよ。アンタがおかしいってね」

「それは良かったよ。諦めてくれたか?」

「それはない」

「え?」

 

 今度は野乃野足軽も山田奏に「え?」という言葉が重なった。だって今の流れは山田奏が実は異常者であったということを朝倉静香が理解して、こんな奴だと思ってなかった――とかいう流れで呆れて百年の恋も冷めるとかいう流れだったはずだ。

 実際トイレから見てる野乃野足軽はイケメンが振られる瞬間ってやつを期待してた。そして今の「え?」という声……つまりは山田奏も同じ様なことを期待してたんじゃ? 山田奏はイケメンでモテモテにも関わらず、女子と付き合う気は無いらしい。いや、正確には平賀式部以外の女子には全くと良いほど興味ってやつが彼は無いようだ。

 確かにそれだけ平賀式部が魅力的なのは野乃野足軽も認めるところだ。けどそこまで人は一途になれるだろうか? それに一方的な一途さだ。それは怖い……と思えるほど。ぱっと見派手だが、朝倉静香は間違いなく美人。男ならそんな子に好意を抱いてもらえてるとなったら、ちょっとはいい気分になったり、それこそ遊び慣れてる男とかならつまみ食いしたり……したりするだろう。

 でも山田奏は本当に平賀式部しかいらないらしい。ある意味でそれは大きすぎる思いを平賀式部にだけ向けてるってことで……やっぱり危険な様な気が野乃野足軽はする。

 

「アンタだって平賀さんの事が好きならわかるでしょ? 恋ってそんな簡単に冷めるような物じゃないって」

「でも……朝倉には悪いけど、俺は――」

「振り向かせて上げる。絶対、私にね」

 

 そういった朝倉静香は山田奏の頬にチュっとして背中を向けて、去っていく。ええ……なんだかんだで結局山田奏が羨ましいことになった野乃野足軽はなんかモヤついたよ。