私が用意した体に、2つの光……いやこの場合は魂というのが正しいだろう。それが吸い込まれていく。そして発光してたマネキンのような肉体が、魂の記憶に合わせて変化していく。その人のように作ることもできないわけではない。ネナンちゃんの記憶も読み取ってるしね。
けどこっちのほうが便利だ。魂の記憶を読み取って生前の本人と寸分違わずの体になってくれるのだ。実際これで魔王だって勇者だって作ってる。アイは違うけど……あいつはそもそもがAIだったからね。元の体なんてのはない。
だからあいつが求めてる理想の性能の体を作ってやったんだ。もちろんあの時に出来る限りで……だけど。でもそれでもかなり高性能ではある。少なくとも勇者や魔王よりは基礎性能は高い。
「けど、一概にアイが魔王や勇者よりも高性能かっていうと……そうでもないんだよね」
自分でもびっくりだけど、勇者や魔王って成長してるんだよね。それは魂とともに、実はあの体事態がそうだ。魂に反応して、魔王や勇者の体は成長してた。多分もともとそういう余地があったのだ。
それに比べると、アイの体にはそういうのはない。けど、その代わりに、沢山のアタッチメントやら、武器やらを換装できるのがアイの強みと言える。勇者や魔王は、私が後で手を加えていくことも出来るわけだけど、それだと二人の意思は反映されないからね。でも二人の成長に合わせて身体自体が変化していくのなら、その体にどんどん最適化していくということだろう。それは確実な二人の強みだった。
ネナンちゃんの両親も同じような方式で生みだした体だ。実際その気になれば魂を定着する……って事はできるだろう。けど……それはやらない。すでにネナンちゃんの両親が宿った体にはタイマーがセットしてある。そのタイマーは五分だ。別に何時間でも良いんだけど、下手に長く接してると分かれるのが辛くなるだろう。
二人が生きてる――そう錯覚してしまうかもしれない。そうなったら辛いのはネナンちゃんである。そんな思いをさせたくなんか無い。別れは悲しいけど、ネナンちゃんにはそれを乗り越える強さを身に着けてほしい。
「実際私がネナンちゃんの立場なら、普通に両親を生かしたままにするだろうけどね……」
だって私にはそれができてしまう。ズルい? だって偉そうな事を言えるのってそれが結局他人だからである。いやネナンちゃんの事は大切に思ってる。でも厳しく接することが出来るのは他人だからなんだよね。
私は自分には甘々なのだ。
「お母さん! お父さん!!」
そう言ってネナンちゃんが復活した両親の胸に飛び込んでいってる。三人とも涙を流してて、その光景はとても尊い物になってる。