uenoutaの日記

好きなものを描いたり、買ったものを紹介していきます。

転生したらロボットの中でした(ただし、出ることはできません)運命という世界線を壊せ 778

 大きな大きな鳥は、空から幾つもの燃える雨を降らします。燃える雨は砂の大地に降り注ぎ、砂獣たちにぶつかると爆ぜて彼らを粉微塵にしてしまいます。誰かが吠える……

 

「しんじまえ!!」

 

 そんな声に周囲からも同じような罵声……というか、心の叫びだろう……それがでる。なにせ私たちは頑張ったが、それでも……だ。それでもたくさんの犠牲がでた。反撃に出る前も、そして出た後も……死はそこにあった。

 確かに私達が手に取った武器は強力だった。砂獣を紙のように切れる。それに、体だって強化されてる。だから早々やられることはないが……それでも死なないわけじゃない。疲れは、判断を鈍らせる。武器を持つのも皆、苦になって行ってたんだ。

 攻撃を受けて、武器を手放せば身体強化だってできなくなる。そうなったら、普段と同じ……砂獣が踏みしめるその脚は私達の胸をいとも簡単に貫くし、その牙は私達の頭を簡単に砕いて潰す。

 戦いの最中、そうやって死んでいった人たちはいる。犠牲はそれでも反撃に出たことで最小限になっただろう。でも誰もが思うんだ。なんで自分だったのだろう……そして自分じゃなくてよかった……と。

 誰だって死にたいわけじゃない。誰だって、死ぬために戦ってるわけじゃない。特に私達のようなただの一般市民は死にたくないから、戦いになんて出たくなかった人たちだ。

 そういう死ぬために戦いを求めるような人たちは最初から軍や賞金稼ぎになるだろう。だからこそ、死が見えたら私たちのような一般市民は足がすくんでしまう。この武器が圧倒的な力……性能がなかったら私たちはこうやって戦うなんて出来なかっただろう。

 素晴らしい性能をしてたから……怖かった砂獣を紙の様にスパスパと切れたから、私たちは戦う事ができてた。それこそ全能感ってやつを感じてた。でも長く戦って、疲労がたまり、そしていくら倒しても減らない砂獣達を見てると……だんだんとそういうのはなくなっていく。

 そして全能感に支配されてたはずなのに、一緒にそれを感じてた市民の誰かが、食われるのを目の当たりにすると、現実ってやつが襲ってくる。私はそれでも武器を手放さなかった。けどここまでで、一回取った武器を投げ捨てて、再び教会へと逃げていった人たちは何人もいる。

 今残ってる市民たちは、もう後がないから、逃げたとしてもただ死ぬだけ……とわかってるから逃げたくても逃げられないって状況だった。いくらこの武器を持ったとしても、英雄になれない自分たち……死ぬのが多少遅くなっただけなんだ……と自覚してた。きっと誰もが……

 そんな中、得体の知れない何かが、次々と砂獣を殺してくれるのだ。思わず叫びたくもなる。砂獣はかなりへって、後は特別な砂獣達を残すのみ……これならもしかしたら……と思える。

 私達には小さな光が再び灯り始めてる。