「ありがとう。俺も、平賀さんが好きだ」
野乃野足軽はたしかにそういった。これできっとめでたしめでたし……とかなるんだろう……って野乃野足軽はおもってた。憧れてた平賀式部と……明日から……
(いや、今から相思相愛……なのか)
――とか思ってた野乃野足軽はちょっとソワソワしてる。なにせ付き合う……という事をこの年までやったことなかったからだ。
「ほん……とう?」
ここに来て、平賀式部がそんな風に言った。野乃野足軽はそれなりにはっきりと言ってた。だから聞こえてないってことはないだろう。けどそういうことじゃないのかもしれない。
聞こえてたけど、確かめたいからいったのかもしれない。自分でも信じられない……のかも。平賀式部の容姿的には沢山の男から言い寄られてておかしくない。けど、平賀式部の性格的に、彼女も付き合ったことがあるようには思えない。
「平賀さん。待ってくれ!!」
平賀式部の後ろからそんな声をかける人がいた。更にザワザワしだすこの一角。ただの廊下なんだけど、人口密度がやばいことになってる。この学校の大半の生徒があつままって来てるんでは? と思うくらいには人がいる。でもそれも仕方ないことだろう。
だってなにせ平賀式部は誰もが認める美少女なのだ。彼女が告白した……となったら、それはもう一瞬で拡散されるだろう。そして今、その真っ只中だと言われたら、昼休みということも相まって誰もが「ちょっと覗いてみるか」となるのも頷ける。
これでめでたしめでたし……となってた矢先……いやめでたしめでたしと思ってたのはそれこそ当人達だけだったかもしれない。野乃野足軽に恋してたやつなんていないだろうが、平賀式部を狙ってた奴は沢山いただろうから、男子連中は阿鼻叫喚。
そしてそこに女子人気NO1といっても過言ではない山田奏がやってきた。
「君は本当に彼の……野乃野君の事を好いてるのか?」
山田奏はそんな事をいってきた。一体何をいいだすのか。たしかに山田奏にとっては認めたくないことだろう。山田奏はその容姿をほこったり別にしてなかったが、わかってはいただろう。
なにせあれだけ女子生徒に人気があるのだ。これでわかってないわけはない。だから野乃野足軽なんかに……と思ってるのかもしれない。山田奏はそれこそ野乃野足軽には感謝とか諸々としてるのも嘘じゃないだろう。
でも、それとこれとは話は別……だからこそ、失礼とは思いつつ、確かめずにいられなかったのかもしれない。