キーンコーンカーンコーン
そんなチャイムの音が学校に響く。それは昼休みが終わりを告げる合図だった。
「平賀さん……」
そう言って野乃野足は困ったように眉を下げてる。その視線の先には、ベッドに寝てる平賀式部がいる。なんで平賀式部がベッドに眠ってるのか……それはあの大変な事件が終わろうとしてた時、平賀式部が野乃野足軽の腕に倒れ込んできたんだ。
「そんな、平賀さんこんな……みんなの前で……ん?」
野乃野足軽は焦った。だってめっちゃ注目されてるのである。それなのにこんなバカップルの様にイチャイチャするのは……とね。でもそれが嫌かというと、全然そんなことはない野乃野足軽だ。なにせ平賀式部は高嶺の花だ。それに女子に触るってことはなかなか出来ることではない。
それこそ山田奏みたいなイケメンなら、向こうからベタベタと触ってくるから女子成分を何時だって補充できてるかもしれない。けど世の男子はそんなに気軽に女性から触って来ることはない、触ることも出来ないのだ。
そんな事をしたら普通に嫌がられる。「きも」とか「やめて」とか冷たい目で言われたら……と思うとそんな行動はとれない。
「きゃーせんぱーい」とか「どうですか?」とか自分から来てくれたりするほどの男ではないと、野乃野足軽は自覚してるのだ。だから不意に平賀式部に触れたらそれはもちろん嬉しいし、興奮だってする。それに事実上、彼氏彼女となったのである。もしかしたら……そういう事をしようって事!? って思っても健全な男子高校生なら何ら不思議ではない。
でも実際はなにやら平賀式部の様子は違った。
「平賀さん?」
おかしな様子を感じ取った野乃野足軽は平賀式部を覗き込む。するとなんか「はあはあ」してる。それにちょっと汗っぽい。汗臭い訳じゃい。むしろなんかいい匂いが漂ってきて、野乃野足軽はよりドキドキしてた。
「平賀さん平賀さん」
名前を呼んで体を揺すってみる。けど平賀式部はなにやら野乃野足軽を呼ぼうとしてるのか、「のの……」と呟くだけだ。これは不味い……と野乃野足軽は思った。そう思った野乃野足軽は公衆の面前だけど、彼女をお姫様抱っこした。
「何やってるんだ!!」
「緊急事態です!!」
山田奏が驚いてなんか言ってきたが、野乃野足軽は勢いで押しのけた。そして保健室へと駆け込んだってわけだ。