「大きいな」
そんな風に立ち上がった鬼を見上げてつぶやいた。思わず逃げたくなる。それに今は頼れる存在だっている。世界の外にはそれこそ自分ではどうしようもないほどに強大な存在なんてゴロゴロといる。それを知ってしまった。だからきっとこれだって任せてしまえばいいのかもしれない。
それこそG-01殿なら、何回も鬼を狩ってる。角を切るのもお手のものだろう。だが−−
『私は手を出しません。色々と忙しいですからね。この世界と交渉してます』
−−と言われた。世界と交渉? どういうことなのかよくわからない。けど、G-01殿ほどの存在ならそれこそ世界と交渉というのもあながち荒唐無稽ではない。だからきっとこっちには手を回せないのだろう。
『任された』
そういうことだ。それにG-01殿は無謀なことはしない。つまりは、今の自分でもこの黄金の鬼をどうにかできる……と判断されたということだ。それならば、期待に応えたい。
「はあはあ……まだだ!」
再び自分は聖剣に力を集めていく。見上げる黄金の鬼が拳を向けてきた。避け−−
(だめだ!! 迎え撃つ!)
−−避けることは諦めた。なにせ砂獣の子がまだ動けるような状態ではない。避けたらほぼ確実に彼女が潰れるだろう。
「ぐううううう!」
聖剣と鬼の拳がぶつかり合う。拮抗する力と力。渾身の力を込めてなんとか払う。けど切ったわけじゃない。それに鬼についた傷はかすり傷程度だ。すぐさまもう一度拳が向かってくる。再び剣を切り返して鬼の拳を下から上に今度は弾いた。拮抗したら力の損耗具合がやばい。なんとか防ぐことに力を注ぐ。正面からぶつかるのはまずい。見極めて……そして受け流す。それを自分は繰り返す。
(研ぎ澄ませ。もっと……もっと!)
緊張が限界を超えて、頭がぷっつんとした感覚。そして次第に鬼の動きがゆっくりに見えてくる。それに鬼がどういうふうに拳を向けるのか、わかる。それに……だ。受け流すたびに損耗してた力。それすらも徐々に研ぎ澄まされていってる。最小限の力で受け流して、そして再び聖剣の光が強くなってきた。
動かずにじっと貯めてた時よりも、動いて極限の緊張状態にいる時の方がさらに感覚が研ぎ澄まされてる気がする。さっきよりもより多く、そしてより密度高く、自分は力を研ぎ澄ませる事ができてる。