(ここに都市核が五つある? そんなことが歴史上にあっただろうか?)
私は記憶を掘り起こしてみたが……そんなことはないとすぐに帰ってきた。私は歴史の専門家ではないし、もしかしたら……があるかもしれないが、流石にそんなことが起こってたらきっとちゃんと記録として残ってるはずだ。
なにせ都市核である。これが余剰にあることがどれほどの意味を持ってるか……それこそもっと昔……まだ人の領域がいまよりも残ってるときには都市核をめぐっての争いだって起こってたらしい。今の時代には考えられないが、昔はそんな余裕もあったのだろう。
そもそもが都市核が何か……なんてのはわかってない。ただ人の為に神が贈られた物……としかわかってない。だからこそ丁重に、そして慎重に扱ってきた。それを研究してるのは教会だけ……だが教会さえもこんなことは出来ないだろう。
もしもこれが本当に都市核だとしたら……
「まさか、これこそが本当の都市核の姿だという事ですか?」
「どういうことだラパン殿!」
私のふとした疑問の声に別の街の領主がそういった。きっと彼は混乱の極みにあるのだろう。なにせ一気に情勢が動いてる。色々と抱えきれないもの、そして受け入れがたい情報で頭がパンクしそうだったんだろう。そこに来て……これである。限界を迎えても責めることは出来ないだろうし。
私はまだ勇者様達と出会ってそれなりの時間を過ごしてる。だからこそ、彼らの非常識さを知ってるが、他の方々はそうではない。彼らが砂獣を易々と倒し、そして都市核さえも掌握できる力を持ってるなんて思ってないだろう。
私ならばこの方ならば都市核をこのようにできるかも――と思える。だが、他の者たちはそんな発想にすらなりえない。なぜなら、この人はあまりにも私たちの基準では測れないからだ。
「信じられないかもしれませんが。勇者殿にはそれだけの『力』があります」
「まさかそんな……」
「そんなことがあるわけないだろう!」
やっぱりだが、そうなるよな……という反応を皆が返してくる。でもそこで王が前に出てくれた。
「皆の者、かの方が我を教会から救ってくださったのだ。その力に偽りはない」
王のその発言で、勇者殿を見る目が皆変わった。