金髪と赤髪は公園のベンチで目覚めてた。二人は日差しにパチパチと目をしばたたかせ二人同時に「天国か?」といった。そして日差しを遮った手を見て、不思議そうになる。
「手だ」
「尻尾もないぞ」
傍から聞いてたら、何言ってんだ? と思う様な事を二人はいってる。日はのぼり周囲には誰もいないが……
「どうなったんだ?」
「いや、わかんね。それよりもお前も……見たのか?」
「見たっていうか……あれが夢だったのか?」
二人は主語を出さずに話してる。でもなんとなく二人は何の事を話してるのかわかってるようだった。でも互いにその夢の内容は口にしてない。そして普通は共通の夢を見る――なんてない。
「なぁ、お前が見た夢って……」
「お前の方こそ……」
二人はちょっとの無言の時間を醸し出す。そして二人して空を見てた。青い空だ。白い雲がゆっくりと流れてる。そして二人はポツリといった。
「「よく最後はこうやって空を見てたな」」
そして二人は顔をみあわせる。それだけで二人は悟ったのかもしれない。同じ体験をしてたと。いや、厳密には同じではなかったのかもしれない。けど、同じように……そう、同じように『犬』になってその犬生を往生した体験をしたと、その空を最後は見つめてたってことでわかったのだろう。
なにせ最後はそれこそ体を動かすこともつらくなってたのだろう。だから、そんなときは動かずにずっと空をみてた。そんな経験が二人にはあった。
それにその時間が嫌いだったわけでもなくて……安心があった。だからそういう事ができた。
「夢……なんだよな」
「夢……でしかないだろ」
なんかもう二人はどうでもよくなってた。一回、死まで体験して、そしてそれが満ち足りたものだったからかもしれない。空を見つつ、金髪がつぶやく。
「死ぬか」
と。もうこの生に意味なんて感じてないのかもしれない。
「それもいいな。だって俺たちが死んだってな……誰も悲しまない」
たとえあれが夢だとしても、あの夢のように悲しんでくれる人なんてここには……現実にはいない。それが二人にはわかってる。なら、もう生きる意味なんてないのかもしれない。
「お前たち、まだいたのか?」
そこに通りかかったのはなんとバウアーの散歩をしてた十字傷の男だった。金髪と赤髪はそこで自分たちの変化に驚いた。なにせ、彼らは真っ先に思ったんだ。自分たちが傷つけたあの犬。バウアーが無事に散歩をしてることに安堵した。
そして二人は思った。同じことを……リードに繋がれてるバウアーを見てうらやましいと。なので進言することにした。
「すまねえ! 反省してる!! だからお願いだ」
「俺たちを……俺たちを……」
十字傷の男はその時点でびっくりしてた。まさかこいつらが謝るなんて……と。そして続いての言葉は想像してた。なにせこいつらには自分しかいない……ともわかってる。こいつらは二人で生きていくのなら、それこそ犯罪しかできないような……そんな奴らだ。
だから続く言葉は「捨てないで」とかだろう。けどどうやら十字傷の男の想像は外れることになる。悪い方向で。
「「俺たちを飼ってくれ!! その犬と同じように!!」」
その瞬間、十字傷の男はダッシュでバウアーと共にその場を離れる決断をした。