「どう?」
「……いない……と思う」
野々野小頭達は開け放たれた自動ドアのところから暗闇が口を開けてるような……そんな内部を覗いてた。一応まだまだ日が高い。だからこの廃ビルの内部だってまだ明るいところは明るい。なにせいろいろと壁が崩れてたり、窓がなくなってたりするところがある。だから光は結構入ってる。なのに……だ。なのに、ビルの中央部はかなり暗い。てか夜じゃないだけに見えそうで見えない……見えないようで見える……そんな範囲に収まってるから余計に何かが見えてしまいそうな……そんなことを野々野小頭は思ってた。
「いっとくけど、さっきの場所まで……だからね」
「わかってる。そっちはどうですか?」
そういって草陰草案は何やらゴツイゴーグルみたいなのを被ったミカン氏に声をかけた。
「大丈夫ですぞ。何もいません」
「よし……いや、よしじゃないけど、いこう!」
そういって草陰草案が前に……出ようとして、そこで手が彼女を制する。
「我々が先に行こう。前は某とアンゴラ氏。後ろをミカン氏とチャブ氏で。君たちは間にいるんだ」
「わ、わかりました」
さすがに大人として、女子中学生を前において、大人が後ろからついていく……なんてのは許容できなかったみたいだ。猩々坊主がいったその案に、大人たちはうなづくだけで反対はしなかった。
そういうわけで、間に野々野小頭と草陰草案を置いて、彼らは再びビルの中に舞い戻った。こういうところをめぐっていく気だった大人たちは準備がよくて、懐中電灯もその電池だって多めに用意してた。なので全員が懐中電灯を持って進んでく。
草陰草案は躍起になって暗いところを積極的に照らしてる。そこから何かが顔を出すことを期待してるのかもしれない。でも――
「いないな」
「そんなことないです! きっと私たちをどこからか見てるんですよ! ああいう存在はそうなんです!」
さっきあのおかしな猫を見た場所まで来てた。そしてそこには何もいなかった。すでにどこかに行ってしまったのか……それともあれはやっぱり見間違いだったのか……けどそこで「やっぱりあれは……」なんて草陰草案は言わない。ここまで……という約束だったけど、この周辺にいるはず! ということで、草陰草案は周囲をくまなく探すことにしたようだ。
「でてきていいよー猫ちゃーん!!」
そんな事を言いながらこのフロアを見回る草陰草案。彼女はなにがなんでも……というきもちになってるんだろう。後ろで「もう良いでしょ」とか言ってる野々野小頭の言葉には反応しない。
そしてそれから草陰草案が気が済むまで付き合った。けど……
「まああんなのに早々出会えたら苦労なんて無いわよ。いいじゃん、見れただけでも収穫だと思うよ。大体の人があんなの一生出会うことなんて無いんだからさ」
「そうですよ! 君はまだ若いんだから!」
「そうだ、焦るのは良くない事だ」
「ああ、焦りは足元を疎かにするからな。修行の身のこの身の某からも忠告だ」
それぞれ野々野小頭、ミカン氏、アンゴラ氏、そして猩々坊主がそういった。けどそんな中、チャブ氏は「はぁー」と大きく息を吐いてこういった。
「悔しいのはわかる。俺たちだって、昨日までは何が何でも不思議な事を体験してみたいって思ってたしな。けど……本当の恐怖って奴をしったんだ。これ以上深入りしない方がいい。
同士として聞きたいことがあるならいつでも連絡をよこせばいい。だから友達が悲しむようなことはするな」
そう言ってチャブ氏はなんか紙切れを草陰草案に渡してた。それはスマホのアプリで友達になるための番号だった。
「ズルいですよ女子中学生と繋がりを持とうなんて! それなら自分も!」
まるでチャブ氏が下心で草陰草案に連絡先を渡したように受け取ってるのはミカン氏である。彼は女子中学生とここでお別れになるのがおしいらしい。
「えっと……わがままに突き合わせてごめんなさい」
そういって頭を下げる草陰草案。彼女はとりあえずオカルト仲間としてここで出会ったおじさんたちと連絡先を交換したらしい。野々野小頭はとりあえず安全そうなお坊さんとだけ交換した。
そしてかなりテンションが下がってた草陰草案は今日はもう家に帰るといった。そういうことで、女子中学生組と、大人組はここで分かれた。
それから大人たちは休日を予定通りというか、予定よりも深くこの街のオカルトを危険がないように追求して、それぞれの日常へとかえっていった。
そして週明けの月曜日だった。猩々坊主へと一つの連絡が届いた。それはあのとき、一緒にあのビルで不思議体験をした女子中学生の野々野小頭だった。
その届いたメッセージはこうだ。
『草案ちゃんが行方不明なんです!! 助けてください!!』
月曜日の夕方頃に届いたそれを見て、猩々坊主はすぐさまあの日の仲間たちに連絡を取った。