風の子がどれだけスピードを上げても、ついていく事ができる。変な軌道をとっても大丈夫に野々野足軽はなってた。絶対に無駄な軌道だし結局は同じ方向に進んでる。
だからそれに付き合う必要なんてないだろう。でも風の子は楽しそうだ。飛ぶのが心底楽しい……という感じ。それは野々野足軽にだってわかる。
だってそれは今の野々野足軽も一緒だからだ。ようやく自由自在に飛ぶことが出来るようになった。なら無駄だけど飛びたい……飛び回りたいと思うのは普通だろう。だからわざわざ挑戦するような風の子の軌道に野々野足軽はついていく。
そしてそんな野々野足軽に一緒について言ってるのが、小さな小石たちだ。確かに理屈と言うか、仕組みというか、そういうのは野々野足軽は理解した。常に自分で生み出した風を補充していけば、自由自在に空を飛ぶことが出来る――そういうことだ。けどだ風を生み出すってのが、何もないところでは感覚的には難しいのだ。野々野足軽的には。だからこその小石。これがあると、ここで風を作り出せば良い……という起点になる。それに小石は耐えられなくなると、勝手に砕けてくれる。それは良い目安になった。まあもちろん、そこそこ小石にはばらつきがあるし、小石と言っても、その材質には実は色々とあったりはする。
だから同じだけ風を受け止められてるのか? といえばそうじゃない。でもそこらへんは野々野足軽にとっては誤差のようなものだった。重要なのは小石を使うと風を生み出しやすい。その起点にし易いという点だ。
だから今は常に野々野足軽は小石を複数個周囲に浮かせてる。それが砕けると、その小石の溜まってた風を掴んで都度補給してると言うわけだ。
一手間加わって面倒ではある。でも今は――今はこうやってしか自由自在に飛ぶことはできない野々野足軽だ。それで今は満足してる。なにせ今までは難しかった事が出来るようになったんだ。
「これが本当に飛ぶってことか!」
その実感を野々野足軽は感じてる。それに……だ。風を自分で生み出せるようになった効果は他にもある。まずは新たな力を感じ取れる様に野々野足軽はなってる。風により近い力とでもいうのか……そんなのだ。風の流れが視覚的に野々野足軽には見える。それに色々な声が聞こえる。
なにせ風とは大気である。大気は常に振動にさらされてて、そして振動とは音である。別に今までも『力』を使って遠くの声を聞くってことはできてた。
でもそれがより少量の力で、そして鮮明に出来るようになった……といっていい。さらに言えば、風を使って行う攻撃……かまいたちとかそれこそ竜巻を生み出す……なんてことも出来る様になったかもしれない。
今はできないがこれからが楽しみだ……と思う野々野足軽。そんなことを思いながら空の散歩を楽しんでると、どうやら目的地についたらしい。
『ここだよ!』
そんなことをいう風の子。けどそこに何かがあるわけじゃない。ま普通に見えるものではないんだろう。でも、今の野々野足軽なら見ることも感じることもできる。
そうなんかおかしい。
「風が、どこか別の所に流れてる?」
風は大気として世界を循環してるはずである。。けど……その場所には何も無いはずなのに、風がなんか吸い込まれてるようにみえた。まるで見えない穴が世界に空いてる……そんな感じだ。