私の予想はどうやら当たってたようだ。ネナンちゃんにもらった球体。それを勇者は聖剣へとはめ込んだ。そして初めての攻撃……今までは勇者の攻撃は強力だったけど、メタリファーの時空間の力の前には効くのは一瞬で、そのあとに時空間から無傷の自分を引き出すことでなかったことにしてた。
けど今回はそれを許さない。大きく勇者の聖剣がメタリファーの片腕を髪の毛事切り裂いた。そしてすぐさまいくつものメタリファーが重なる様にして見える。
これはいつもの事だ。時空間……時空の狭間ともいうべき時間と空間の違う自分自身。それを観測できるメタリファーは無傷の自分を引き出すことで攻撃を「なかった」事にしてきた。
そして今回も……とメタリファーは考えただろう。まあ実際はメタリファーというか今メタリファーを操ってる教会の魂が……かもしれないけどね。沢山の時空間違いのメタリファーがずれてそして戻っていく。今までならそれで攻撃はなかったことになってた。
けど……
『ウフオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!?』
――そんな声……いや悲鳴が響く。なにせ一番驚いたのはきっとメタリファー自身だろう。だって時空間の別次元の自分を引き出した筈なのにその傷は治ってなんてないんだから。
きっと激痛が走ってることだろう。まあ痛覚があるのかはわからないが。そのままメタリファーの腕や斬られた髪の毛が地面に落ちていく。それは私がG-01を使って地面に落ちる前に手に取った。なぜにそんな事するのか?
それはメタリファーの力が関係してる。時空間の力がこの世界に影響を残すのは困る。だからこそ私は地上に落ちる前に回収したのだ。まあそれだけじゃないけどね。
せっかく力の残滓が残ってるんだし、もっとよく調べたかったってのがある。髪の毛だけではサンプルとして少なすぎたかもしれないが、片腕は肩口くらいから切れてて腕が一本丸ごとあるからね。これはとても貴重ではないだろうか?
私がそんなことを思ってると、更に激しくメタリファーは髪の毛を動かして猛攻を初めて、さらには切られた部分から腕が生えた。いや、ただ生えただけじゃない。なんか増えてた。同じ傷の部分から二本の腕が生えてる。それってバランス悪くないか? とか思っちゃったよね。
けどその程度で今戦ってる面々は動揺なんてしない。今更なんだろう。今更腕が二つになったとて、そこまでの衝撃なんてないみたいだ。でもただ腕を増やしたのか? と言われたら、きっとそうじゃないんじゃないだろうか。その必要があったから……それかそれをやったら有利になる……という考えがあるからだと思われる。
まあもしかしたら中の教会の魂達が変な事をしてああなっただけ……というのも考えられるけどね。