「あれが、元凶なら!」
そう言ってアンゴラ氏が買ったお菓子を掴む。そして力を込めて、投げる動作をする。それに対して草陰草案が「だめ!」とかいった。
体に当たる前にバチッとなってた。でも……だ。でも、あの女性には効いたようだ。なぜなら、その瞬間、彼女の体が飛んだからだ。彼女は人形が投げられたみたいに、なんかおかしな感じで彼女は飛んで後ろにいた人を巻き込んで倒れる。
「やっ……た?」
アンゴラ氏がそういう。何故か疑問形。彼は明確に彼女を敵として攻撃をしたはずだ。なのに……その反応。実際、このとんでもない状況の原因である彼女がこんなに簡単にやれる――とは思ってなかったんだろう。
もしかしたらその力をぶつける相手が現れて、そして激しいバトルができる……とか思ってたのかもしれない。
「あ、あの人は泣いてたんだよ! それなのにあんな一方的に!」
「殺した訳じゃない。まずは止めるのが先決だ。これ以上被害を増やすわけにはいかないだろう?」
「うぐ……」
アンゴラ氏のその言葉に草陰草案は何もいえなくなる。そしてそのアンゴラ氏の言葉には皆が納得してるらしい。「うんうん」とうなづいてる。やっぱりだけど、大人の男性のアンゴラ氏にただの女子中学生の草陰草案は言い勝つなんてできない。
「それにあの女だって正気だったのか? 言葉を交わせる状態だったか? お前の言葉に反応してなかったはずだ」
状況的な証拠を挙げ連ねられて、草陰草案は「ぐぬぬ」としか言えない。
「とりあえず彼女の事をちゃんと確かめて……」
そんな風にいって再び彼女をみた草陰草案の言葉が詰まる。いや、正確は違う。彼女が吹っ飛んだ場所を見た――と言ったほうが正しい。けど……
「いない!?」
アンゴラ氏がそう言って手の中にガムを掴む。まさか消えるなんて誰も思ってなかった。てかあの女性は存在感はあった。なのにこっちの誰もがその動きに気づいてないなんて……それに……だ。
「東海道殿はあれをカメラに収めてたのでは?」
「そのはずなんですけど……」
「消えた!?」
「おい! ヤバいぞ!」
「気づいて! 危ないよ!!」
――というコメントが大量に流れてた。一体どこに? 草陰草案たちはキョロキョロとと周囲を見回す。そのときだ。
バサァァ
という音とともに影が落ちる。駅の構内だが、そこそこ天井は高いこの建物。そこにあの女はいた。その翼を広げた女が両手を頬に当てて、血の涙を流す両目を草陰草案たちにむけていた。