ギギィィ――
フロントライトが直接目に飛び込んできて、桶狭間忠国の視界は真っ白になる。ものすごいピンチ。トラックが異様に大きく見えて、その音しか聞こえない。恐怖がせりあがってくるような感覚を感じながらも、桶狭間忠国は「ああ……」と思ってた。
でも、それでもトラックにはビビッて一歩も動けてなかった。
「このころの僕は誰よりも強いって……そう思ってた。でも、この時初めて、死を感じたんだ」
そんな風につぶやく桶狭間忠国。そして目の前の小さな桶狭間忠国はブワッと涙を流して「うわあああああああああ!?」という悲鳴を上げて後ろに倒れて体を抱え込む。子供にしては大きなその体を必死に小さくして、まるで自分を守ってるかのよう。
「ああ、やっぱり」
トラックを受け止めて、そのライトで照らされてるせいでちゃんと顔は見えないが……そこには確かに誰かがいた。
「あぁ……うぇ……」
『大丈夫か坊主?』
『そっか、では気をつけろよ。俺だっていつでも救えるわけじゃないからな』
「あ……あの! ど、どうやって……」
幼いながらにも、人がトラックを止める……なんてことが異常だということを桶狭間忠国はわかってたらしい。だからこそ、そう聞いた。けど……その人は「はははは!」と笑った後に桶狭間忠国の頭をガシガシと撫でてこういった。
『そんなのやれば出来るんだよ。お前も信じる者になれ!』
その言葉と共に、「じゃあな!!」といってその人は去っていく。いや、違う。去っていくというよりも、まるで消えたかのようにふっとその場から消えた。それから――
「坊主大丈夫か?」
――というトラックの運ちゃんがやってきたりもしてたが、その光景が見えることはなかった。ただ幼い桶狭間忠国が目を輝かせて彼が去ったさまを見つめ続けてる姿だけがあった。そしてそれを見つめる大きくなった桶狭間忠国。
「ああ、そうだ……これが……」