「えっと……俺……」
ばつが悪そうな野々野足軽。きっと野々野足軽もこんな状態でデートをするのは失礼だと思ってるんだろう。実際平賀式部はニコニコとしてるが、その笑顔を見て野々野足軽はきれいとかかわいいとかよりも、今は恐怖が勝ってた。実際周囲の人間はその平賀式部の顔に見惚れてたりする。
でも対面してる野々野足軽は違った。その本心が見える。笑顔の圧がのしかかってた。
「ご、ごめ――」
「別に、私は謝ってほしいわけじゃないんです。疲れてるんですか?」
「今って夏休みだし、足軽君は別に部活にも入ってないですよね? ならどうして? まさか、ゲームとかしてたとかですか?」
ブンブンブン!! ――と野々野足軽は激しく首をふった。流石にそんな事で寝不足だから平賀式部とのデートに真剣になれてません……とかだっだら、振られても文句言えない。
だから流石にそれは違うというように野々野足軽は全力で首をふった。
「それじゃあどうして?」
平賀式部のその顔は真剣だった。それにさっきまでの怒りというよりも、「心配」というのが強く出てるのがわかる。
「私はまだ足軽君の全部を知ってるなんていえない。けど、適当に付き合うような人じゃないと思ってる。違う?」
平賀式部の言葉が野々野足軽に染みる。大切に思ってくれてると、感じることが出来る。
ぐっ……と心に何かが刺さったかのような痛みが野々野足軽を襲う。実際何も刺さってなんてないが、けどこの痛みは本物だと思った。もう伝えてもいいんじゃないか? とか思ってきた。
このおかしな力に巻き込みたくなかった野々野足軽だが、世界は愉快な方向に向かってしまってる。いってしまえば、突如平賀式部にも『力』が発現したっておかしくないんだ。
そして今や、一日に何件もそんな報告が上がってる。
(流石に、全ての元凶が俺自身……なんてのは言えないけど……)
『それって、ただの言い訳ですよね? 大きな嘘をつき続けてるのが心苦しいから、僅かでも話して、自分が少しでも楽になりたいだけでは?』
「実は、少し前に『超能力』に目覚めたんだ」
「え?」
野々野足軽はちょっとだけ心が軽くなって、そして平賀式部はより深刻にその事を捉えてた。