「それで超能力ってどんな?」
心配そうな、けどちょっとワクワクしてるような、そんな声色だった。平賀式部は横一列にカラオケのシートのに座る。野々野足軽達は、別に歌うつもりはないが、とりあえず落ち着いた曲を流す。
「えっと引かない?」
「まだそんな事言うんだ」
ちょっとふてくされたような顔をする平賀式部。それに慌てる野々野足軽はどれを見せるか考えてなかったから、一番オーソドックスな力を披露した。それは……
「わあ!」
――そんな驚きの声が平賀式部から出た。さっきのふてくされたような顔はどこへやら、それを見て興味津々にしてる。
「これって、マジックじゃないよね?」
「そう思うのならほら」
そういって野々野足軽は更にたくさんの物を浮かした。それこそ十インチのカラオケで楽曲を選ぶためのタブレットなんておもそうなものから、歌うときに持つマイクも机にあるだけじゃなく、予備のマイクまでヒョイッとういて、近くまでくる。
きっと超能力と言われれば、誰もが「あの物を動かすやつ?」とかいってしまうくらいには代表的な力だろう。だからこそ、平賀式部も疑うことはない。マジックとも一瞬思ったが、マジックだと、宙に浮いたマイクを平賀式部が引き寄せようとしても、それにマイク自身が抵抗なんて出来ないだろう。
けど今、それをしてる平賀式部に野々野足軽は超能力で抵抗して見せてた。マイクを引き寄せようとしてるのに、逆の力が働いてるように、マイクが抵抗してる。
そして他の浮いてるものもマジックでは不可能な複雑な動きをしてるんだ。これで疑うなんて出来ない。
「本当、なんだね」
「ああ」
「でも、すごい。こんなに操ってるなんて……夏休みに入ってからなんだよね?」
ギクッとその平賀式部の言葉に思う野々野足軽。確かに世間では暴走してる力の印象が強い。だからいきなりこんなに使いこなしてることがすごいと平賀式部は素直に感心してた。
「まあ……ね。いっぱい練習できたし。それにほら、こんな力、ハズレ能力だろ?」
だからこそ、この短期間でもこのくらいならできるようになった……と納得感を野々野足軽は与えたかったんだ。
「うーん、私には力のあたりハズレはわかんないですけど……でも、他にも体調の変化はないんだよね?」
「それは……大丈夫」
「そっか、それなら良かった」