「ふう……」
ある意味でそれは大仕事だったと言える。なにせ暴漢を倒すなんて普通ならとても大変なことで、本当なら速攻警察に通報する案件だろう。けど野々野足軽には力があった。だからこそ、簡単に暴漢を昏倒させる事ができた。
実際の所、漫画とかアニメでよくある首の後ろをトン――とやって気絶させる……なんてのは現実ではできない。けどそれよりも簡単に、野々野足軽は人を昏倒させる事ができる。
「さて、これからどうするか?」
そう思ってガチャッと玄関を開いて中にはいる。家の中は外とは比べものにならないくらい暗くて、静か。別にそれはいつもどおりだ。まあ流石にいつもならリビングとかからテレビの音とかしてるだろう。
でも今はそれもない。ただただ静寂。靴を脱いで床に上がると、野々野足軽の元へと天使っ子と悪魔っ子がやってきた。
『ご主人、私達やりました!』
『いっぱい褒めてくれていいぞ!』
そんな風に言ってくる二人。野々野足軽はそんな二人をナデナデしてあげる。そしてそのまま脱衣所へと向かう。扉を開けると、白目を向いて肩が外れてそうな男の姿があった。どうやら意識を失ったときに変な倒れ方をしたらしい。そのせいで扉を透過してた腕の影響で、肩が背中側に外れてた。
「うわっ……」
そして今は夏……暑いのも納得だろう。気絶してる二人には汗が滲んでるのが見える。このままだ危ないかもしれない。そう思った野々野足軽は力で小頭と母親に癒やしを与える。
癒やしというか、活力? かもしれない。力をエネルギーに変えて送り込んでる感覚だ。そして再び男をみる。
「おっさん……やってくれたな」
静かに……だけど確実に野々野足軽は怒ってた。家族をこんな風にされたんだ。怒らないやつはいないだろう。けどだからって消すことはできない。とりあえず腕を開放する。
「さて、こいつはどうするのが一番か……」
そんなことを考えてる野々野足軽は後ろでうっすらと意識を取り戻してた野々野小頭に気づいてない。先に二人に活力を与えてたから、若い小頭は案外早く意識を取り戻したのかもしれない。