「こっち!」
脚がガクガクとしてへたり込みそうな小頭のことを幾代が引っ張って走り出した。村中の変な靄は確かにそこにあるが、ゆらゆらと揺れてる。確かにそこにあるが、でも別に足軽たちに注目をしてる……とかはない。
「あっあぁ――」
「止まっちゃだめ! 走って!!」
ただ突っ立ってるだけだとおもわれたこけしのような靄。けどそれは足軽たちが走り抜けてると変化が起こってた。どういうことかというと、奴らはゆらゆらと揺れるように足軽たちに向かってきたんだ。だからそれをみて更に怖がる小頭。でもここで足を止めようものなら、どうなるかわかったものじゃない。そう思ったんだろう。だから幾代は多少強引にも小頭を引っ張ってる。すると……だ。
「足軽も頑張って! 離れないでよ!」
――といってきた。それにちょっとびっくりする野々野足軽。まさか彼は自分もそんな風に声をかけられると思ってなかったんだ。けど走りながら考える。
(そっか、普通は俺のことも心配だよな)
幾代は女の子だからいくら活発で運動神経が良いと言ってもやっぱり引っ張っていけるのは一人だけだ。それも自分よりも小さい小頭だからこそそれができてる。
彼女では一人を引っ張るしかできない。けど本当なら足軽だってちゃんと引っ張りたいんだろう。責任……を感じてるのかしれない。なにせここには幾代が連れてきたから。
(俺は全然大丈夫なんだけど……そんなのわかりようもないもんな)
そう考えながら足軽はこういった。
「大丈夫。そっちは小頭を頼む!」
そんな風に焦ってる風にいう。自分よりも妹を頼む兄を演じてる。もちろん二人に手出しさせる気はない。走るのに夢中になってる二人だ。多少足軽が力を使ってもバレることはない。けど問題はある。
(向こうの存在にはまだ確証されたくないよな)
だからあまりにも露骨には足軽は自分が力を使ってる……とういう風には見せないようにしようとおもってた。
(いや、これは……)