(暑そうだな……)
そんなふうに小頭は鬼を見てた。なにせ鬼の肌は黒い。いや浅黒いとかじゃなく、赤みが入った黒だ。まさに鬼らしいといえば鬼らしいだろう。けどそんな肌の色をしてるし、今は夏である。
そして鬼が立ってる場所はもろに日向。さっきから汗もぼたぼたとかいてる。
(鬼も汗をかくんだ……)
とかそこじゃないだろうという感想が出るくらいには野々野小頭は鬼と言う存在に慣れてきてた。この異様性になれるのもどうかと本人も思うけど、小頭は比較的周りがね。
只者じゃない人達に最近なってるから、鬼……という存在にも案外早く適応できるようだ。しょうがない……と小頭は思う。だってこのまま倒れられても困る。だってそれで介抱するのは小頭なのだ。
そんなのはゴメンだ。なのでトプトプと水筒のコップに水を注いで、日差しの中にでた。
そんな言葉にもなってない声を出しつつ、コップを差し出す。けど鬼は目を瞑ってるから気づいてない。立ったまま寝てるのかこいつ? と思う野々野小頭。小頭だっていつまでもこんな暑い日差しの中にいたくないから、「ちょっと」とようやくまともな言葉を発した。
それに反応して鬼は片目を開ける。そしてコップを差し出してる小頭をみた。動かない鬼、だから押し付けるようにコップを差し出す小頭。
するとコップを徐ろに受け取った鬼が中身を見る。それは透明な水だ。それ以外無い。そして再び小頭を見る。けど小頭は何か反応をするわけじゃない。なので少し迷いながらも、鬼は一気にコップの中の水を口に流し込んだ。
ゴクリ……
――と喉が動く。そして空になったコップを小頭に返してくる。
「まだいる?」
そんなふうに聞く小頭。やっぱり体も大きいしずっと日向にいる鬼は小頭以上にのどが渇いてるだろうと小頭は思ったのだ。けど鬼は首を横にふった。それからまた目を閉じて棒立ちしてるから、小頭は下の木陰に戻ることにした。
(変なやつ)
鬼にたいして変も何もないかもしれないが、そんなことを小頭は思った。それから少ししたら、シャーという音にキキーというブレーキ音。
「お・ま・た・せ」
そう言って自転車にまたがったまま、言ってくる美女。その姿は夏の風にふわりと揺れる長い髪には黒い髪の中に赤いメッシュがあって、そして白い角がそこそこ長く伸びてる。
赤黒い肌にすらっとした女性らしい体だけど、それでも筋肉質なのがわかる。大きな胸をタオルで縛って隠してて、下半身もズボンというかほぼパンティだけ。
それに身長だって170はありそうな長身なお姉さん系美女がそこにはいた。
(いやだれ!?)
真っ先に小頭はそうおもった。