uenoutaの日記

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ある日、超能力に目覚めた件 ???話partD20

 世界に……界門から響く音が伝わっていく。強い脈動ともに、空に広がる波紋。さらには不安定だった界門が更に色々な形に伸びては縮んで、そしてついに……界門が消滅する。その時に世界の空は元に戻り、そして……静かになった。
 海の音……そして風の音……そんなのが懐かしく彼女たちの耳に届いてた。そして更に札からの通信からこんな声が聞こえてくる。
 
『世界中の界門の閉門を確認。全ての界門が……消滅しました!!』
 
 通信の向こうで「ワア!!」――という歓喜の声が聞こえる。それはそうだろう。なにせそれはこの世界の悲願だったのだ。いきなり世界に現れてずっとこの世界を苦しめてきた界門からの侵略者。
 けど、その出入口であった界門事態がなくなった。もしかしたらまだ残ってる化け物はいるかもしれない。これからはそれを倒していかないといけないかもしれない。でも……もう、増えることはない。
 界門から現れる侵略者はもういないのだ。それはきっと心の余裕になるだろう。長年この世界を苦しめて来た問題からの解放……それを象徴してるような綺麗な空。けど……
 
足軽のアホおおおおお!」
 
 折れた角が特徴的な黒髪で着物に身を包んでた少女がそう叫んだ。大和撫子を絵にかいたような清楚なお嬢様的な見た目の少女が発するとはちょっと思えない言葉。すると残りの少女たちも同じように空に向かって、いや界門があった場所に向かって叫び出した。
 
「あんさんの子種まだもらっとらんよおおおおお!」
「お兄ちゃぁぁぁぁぁん!」
 
 けどそんな言葉はこの青い空へと吸い込まれて、そして消えていく。それでも何度も何度も……彼女たちは空へと叫び続ける。とんでもない事を言ってる奴もいるが……彼女たちは野々野足軽が去った事を悲しんでるのは一様に事実だろう。
 
 野々野足軽が最後には帰るのはわかってた。けど、それでも少しはまだ時間がある……と彼女たちは思ってた。心を整理する時間、最後に通じ合う時間……そんなのがあるって……でも、現実はそんなに優しくなんてなかった。わかってた筈だ。
 こんな世界で、沢山の悲劇がいくつも起こってきた。だから彼女たちだって生きてる内に何度だってそういうのを見て来たし、辛い目にだってあってきた。だから覚悟をして無ければならなかった。
 世界が理不尽だってわかってたのだから。でもそれが出来なかったのは、きっと野々野足軽に出会ってからの日々がそれこそ夢のようだったからなのかもしれない。
 いつしかこの世界が理不尽だと忘れる程に、楽しかったのかもしれない。でもいなくなって思いだした。そして「もう遅いんだと……もう二度と会えない」のだと胸をえぐってくる。
 涙がとめどなく流れる。嗚咽だって、止められない。世界は歓喜に満ちている。けど彼女たちは、今一番の悲しみの中にいた。
 
 けどその時だ。
 
「皆ごめん」
 
 そんな声が聞こえてきた。そして浮かび上がるのは薄くではあるが間違いない野々野足軽の姿だ。
 
足軽!」
「お前様!」
「お兄ちゃん!」
 
 そんな風に三人が近づくが、その体を素通りする。つかめないし、触れられない。それを理解して黒髪の少女はいう。
 
「帰るのですか? 戻ってこない……の?」
 
 その言葉に困ったような顔をする野々野足軽。けどはっきりというよ。
 
「戻ることはできない。界門を新たに開くことになる。それは……やっちゃいけない事だろ?」
 
 確かにそうだ。今世界は界門の消失に湧いてる。そんな中、再び界門が開いたら? 世界は大きな絶望に包まれるだろう。それこそ歓喜からの絶望の落差はすさまじい事になる。
 やるべき事はやったんだ。野々野足軽が帰るというのなら、引き留めることなんて彼女たちにはできない。
 
「お前さん……わっちは待っておるよ」
「はは、幸せになってください」
「お兄ちゃん……」
「これから沢山の出会いがあるよ」
 
 そういって、野々野足軽は綺麗になった世界に目を向ける。
 
「この世界はもう、君たちの元に帰ったんだ。だからあとは僕だけだ」
 
 最後のピース……それが自分だと、野々野足軽はいう。野々野足軽が鬼男と入れ替わったら、世界は元通りになる。だから、野々野足軽はこの世界にもう帰る気はなかった。
 
「ありがとう。皆、幸せになってくれ」
 
 そういって野々野足軽は消えていった。そしてやっぱり彼女たちは泣いてた。