「しかたないですね」
そういってミレナパウスさんは回復魔法をリファーちゃんが泉から移動させた亀人間二人にかける。実際ただ足がつる……なんてのは別に回復魔法なんていらないだろう。けどミレナパウスさんもかわいそうに思ってしまったのだ。それに……こういう判断もある。
(まあ別に彼らが暴れてもそこまで脅威ではないですからね)
そう判断したんだ。武器もないし……確かにその不死性は厄介だ。きっとこのカメの背の世界の生き物だから、彼らも不死である可能性が高い。でも不死だからイコールで強い……ということにならない。不死は確かに厄介だけど、最強とは違うのだ。
「はぁはぁはぁ」
回復魔法の光が霧散していく。それと共に、じたばたとしてた亀人間たちの呼吸も落ち着いていく。地面をみて、何やらその手に土をつかんでる。ここが水の中ではなく、地上だというのにやっとで気づいたんだろう。
「もう大丈夫だよ?」
そんな風にしゃがんでにっこにこで伝えるのはリファーちゃんである。彼らをこっちに送った後に、彼女もすぐにこっちにきた。それで見守っていたのだ。
「ミーお姉ちゃん。二人回復したんだから、みんなも……ね!」
「はいはい」
そういわれてミレナパウスさんはついでだといわんばかりにリファーちゃんと一緒にセッションをした亀人間たちも回復魔法をかけてくれる。回復魔法は普通ならものすごいエネルギーの消費が激しいものだ。
実際、ミレナパウスさんが自身の世界にいたときにはそんなに頻繁に使うことはなかった。それこそ奇跡の力……とか呼んでたほどだ。最後の戦いでバンバンと使ってたのはこっちのアイテムを渡してあったからである。けど今はかなり強力な回復魔法だって軽々と使えるだけの成長をミレナパウスさんは遂げてる。確かに私の渡したアイテムもあるが、それだけじゃない。ちゃんとミレナパウスさんは成長してる。
この世界にいる限り、ミレナパウスさんもリファーちゃんも自身のエネルギーを回復する手段がない。いや、リファーちゃんは厳密にはわかんないが、ミレナパウスさんにはないわけで、一応節約を心がけないといけない。
でもこの程度なら……ね。ほぼ誤差みたいなものだ。だからミレナパウスさんによって亀人間たちの腫れた皮膚も、ひびが入った骨も、そしてその体に蓄積された疲労も、きれいさっぱりに消え去った。
そこまで回復させる必要があるのか? と思うかもしれないが、中途半端にかすり傷みたいな小傷を治すのなんて本当はエネルギーの無駄なのだ。だからそんな傷を治すなら、体全体を一気に治した方がいい。楽だしね。
でもそれだけのことを簡単にやってしまったら……
「「「「ははーーーー!!」」」」」
なぜか復活した亀人間たちが皆、ミレナパウスさんにひれ伏してた。