私が野々野足軽に対する印象は……はっきりいって何もなかった。だって入学してから話した事あった? というレベルである。別に席も近くないし、同じ空間にいるだけの他人……いやクラスメイトだから他人というのは酷いかもしれない。
でも……実際、今まではクラスメイトだけど、他人のような距離だったのは確かだ。むしろ
(あいつ私の事知ってたんだ)
――である。あいつはクラスメイトなんて興味なさそうだった。特別に仲良くしてるクラスメイトがいるようなかんじでもないし、どこかのグループに属してるってわけでもない。ただ静かに、平穏に日々を過ごすのは目標にしてるような……そんなつまらないやつ。
それが私の野々野足軽に対する印象だった。いうなれば何もない。ただ一緒の空間にいるだけの人だ。でも……考えて見ると、少しここ最近は雰囲気が違ったような気がする。
「あれあれ~稲ちゃんにも恋の予感?」
「えー稲、あんたまさか!?」
「あんたも告白されたってのか!」
「ちがーうー!」
そんなちょっとした騒々しさと友達との言い合い。これこそ青春だろう。結局なんとか誤解は解いた。私にはそんな人いないってね。けど、ちょっと気になることは確か。そもそもあの栄養ドリンク……まだ持ってるんだよね。
家に帰って部屋に入るとバックをガサゴソとして野々野足軽からもらった栄養ドリンクを取り出した。それを部屋の中央の丸いテーブルに置いた。とりあえず着替えて、ぺたんと座布団に尻をつける。ちゃぶ台のようなそのテーブルには他にも色々とのってる。飲みかけのペットボトルが3本やら、重ねた雑誌、リップやネイルのための道具とかもある。そんな雑多な中に、一つ物が追加された。
私はそれを見つめる。おもむろにちょっとテーブルの上を整理する。いや、床に追いやっただけだけど……それでテーブルには野々野足軽からもらったペットボトルが一つ。私はテーブルに頬をついた。そして、ペットボトルをみつめる。目を閉じるとあの時の光景が浮かんでくる。すると……ドクンって鼓動が早くなるのがわかる。
「なんなのこれ?」
そんな風に私は呟く。私はそれから、教室内で野々野足軽を時々視線で追いかけるようになった。