「えっとやっぱり信じては……」
いきなりの大川左之助の発言にショックを受けたような感じにシュンとする草陰草案。それに対して、大川左之助は慌ててフォローを入れる。
「違う違う。さっきも言ったけど、その力は間違いない。信じてるよ。でも……」
「でも?」
「でも……なんだ? 彼女は本物だ。それを世界に向けて晒せば、この世界の常識がひっくり返る。それはある意味で……僕たちが世界の変革に手をかけるって事だ。そんなの興奮しか無い」
テンションが高いのか低いのか分かりづらい朝日蔵三はハッキリとそういった。多分彼的にはとてもテンションが高い状態なのだろう。けど、その言葉にはあんまり抑揚もないし、何よりも動きが彼は静かだった。普通はそれこそめっちゃテンションが上がったらそれが行動にでるものではないだろうか? 飛び跳ねたり、手を振り上げたり。それこそ声が大きくなったり……だ。
でも彼はさっきまでと何も変わらないような感じなんだ。ただ静かに、そう言ってる。だから言ってることはなかなかにやばいことだが、本気なのかどうか分かりづらい。
それに……だ。それに大川左之助が心配したのはきっと朝日蔵三がいったそのことだと思われるのに、彼自体は気づいてないみたいだ。
「それが問題だろ。もちろん簡単に信じてくれる人はいないだろうが、彼女の力は本物だ。なら何回だってできる。ライブとかでも示せるだろう。そうなると認めないといけなくなる……そうなったら……本当に俺たちは……彼女は無事でいられるか?」
「……組織……か」
「確かにそれがある……か」
なんか友達同士でピキーンと通じ合ってる。でもそこは流石に草陰草案だって同じオカルトマニアである。彼らの話が……その断片からでもわかった。
「組織というのは……本当に? 私、狙われますか?」
「え?」
「ああ、俺たちもその存在はハッキリとはしらない。でも……」
「それは定番」
「それに組織ってやつは暗躍してるものだしな……」
「え? ちょっ……」
「それでは私はこの力は公開できないってことですか?」
「それで君は満足できる? 素直に今の世界に順応できるのか?」
「それは……」
「えっと……何の話?」
さっきから混乱してる声を発しるのは野々野小頭である。でも彼女は草陰草案たちとは数歩後ろにいるから、彼女が四人の会話に混ざる事は出来ない。だから草陰草案と大川左之助、朝日蔵三、東海道馬脚たちはどんどん自分たちだけで成り立つ会話をしてる。つまりは彼らの中では『組織』という何かを懸念して話をしてるっことらしい。
野々野小頭は「バカバカしい」とか思ってた。でも実際、変な撮影がなく終わってくれるのなら……とも思ってた。実際友達が全世界向けに変な映像を流すのは友達としてどうかと思ってたからだ。
「えっと、あの会話どう思います?」
そう野々野小頭は隣のアンゴラ氏に囁く。今の言葉には「やばいですよね?」とかいうニュアンスもあった。それに彼はスーツを着こなす社会人でもある。こんなユウチューバーみたいなのよりもよっぽど社会に適応してそうだとスーツ姿だけで野々野小頭は思ってた。
だからアンゴラ氏は同調してくれる……と。でもそれは間違いだった。だって彼も草陰草案や大川左之助たちと同じ側の人間だからである。
「君たちの言いたいことはわかる。不安になる気持ちも……そして組織なる世界の裏側に蠢く奴らの存在は決して軽視していいものじゃないだろう。だが安心してくれ」
そう言って彼、アンゴラ氏は胸ポケットから小さな石をとりだした。そしてそれを……なんと浮かせてみせたのだ。
それを見て三人は驚き、一斉に声を上げた。
「まさか……」
「まさか貴方も!」
「ここに二人も能力者が……すげえ……」
これを見て野々野小頭は思った。
(頭痛い)
――ってね。