人間を超越した動き。それを青年は出してた。きっと意図してた……わけじゃないだろう。ただ戦闘が楽しくなって、自分が望んでた戦いができることに歓喜に震えた結果、アドレナリンが限界を突破して出てたんだろう。
それによって青年は脳のすべてのリミッターを外し、力を……超能力を限界を超えて使うことができた。青年の超能力は身体強化。田上稲が意識しないと気付けなかった五感から脳まで……まさに身体といえるすべてを強化して青年は肉体の限界を超えてた。
だからこそ……だからこそそれは想定外。相手をしてた顔が見えない彼も一瞬その動きを見失った。でも自身へと迫ってることだけは確かだ。だからこそ、サイコキネシスの膜を自身の周囲に張った。
反発力を発揮する膜だ。触れた瞬間、反発力によって彼には近づくことができないってやつだ。けど……
「見えてんぞおおおおおおおおおおおおおおお!!」
その言葉と共に眼前に迫った青年の拳は一瞬でその膜をかき消す。
「はえ?」
顔が見えない彼から思わず変な声が出た。なにせそんなことが起きるとは思ってなかったからだ。実際、今の膜で青年を押し返せる……とは顔が見えない彼だって思ってなかった。それは今までの戦いの勢いでわかってた。
でもわずかてもその動きを止められればそれでよかった。それからでも全力のサイコキネシスをぶつければいい……と思ってたからだ。でもその思惑は外れた。なにせ展開してた反発力の膜は一瞬でかき消えたからだ。
そしてその拳が眼前に迫る。その瞬間が顔が見えない彼にはゆっくりと見えてた。でも考えてることは違ってた。そう、短い人生の走馬灯……それが見えてたんだ。
その拳には自身を死に至らしめる……それだけの力が込められてるとわかってたんだ。いや、超能力者同士だ……その力を感じてたのかもしれない。拳だってもうほぼ作られてない拳……でもその手に集められてる力……そして膨らんだ筋肉と、限界の強化で真っ赤に焼けたような手は触れてなくても熱を感じるほどだった。
(これはミスったな……)
最後にそんなことを思って顔が見えない彼は目を閉じる。それは勝敗は決したと認めた態度だった。
そして、青年が振りぬいた拳が冬の空派に点在してた空の雲にいびつな形の突き抜ける様な穴を空けた雲をその直進上に作った。
それはその日、おかしな形の雲としてSNSを騒がせた。