uenoutaの日記

好きなものを描いたり、買ったものを紹介していきます。

転生したらロボットの中だった(ただし、でることはできません)輪廻の輪の外へ 34

(ふう……)
 
 なんとか力の感じを近づけれたと思う。時間がかかって実はこれで三回目だが、ようやくコツを掴んで来たと思う。魔王の過去に入った瞬間に、私は素早く力を馴染ませる。すると――
 
(うん? なんか頭にアイコンが見える)
 
 それはどこかで見たことがあるような再生、停止、更に早送り、巻き戻し、更にスキップとかの欄もあるみたい。スキップって……どこにスキップするのか謎である。だれがチャプターを打ったんだろう? 
 
 私はとりあえず停止を意識してみる。するとあら不思議、目の前の映像が止まった。それに驚く事も起きた。私はこの過去視において、魔王と同化してた。けどそれは当然だ。だってこれは魔王が見てた映像を私がハッキングしてるみたいな感じだ。
 だから魔王視点なのは当たり前。当たり前……の筈なんだけど……
 
(うそ……)
 
 なんと私は魔王の視点から離れてしまってる。魔王の記憶の中で魔王から離れる……まさかそんな事が出来てしまうなんて驚きだ。今、私はとても伸び伸びと動けるみたい。
 
(ひゃっほおおおおおおおおおおおおおおおおお!)
 
 自分の脚を動かして走り回れる!! これはこうなってしまってから初めての体験だ。なにせ私は普段は半身浴しながら、脚を動かしてるだけだからね。こうやって風を感じるって事ない。まあそもそもなんで記憶で風を感じるのかも謎だ。そこまで魔王が情報として記憶してるとか? 
 まあわからないことは考えても仕方ない。私は今、感動してるんだ。
 
(へいへーい、魔王この野郎)
 
 私は邪悪なゆりかごに寝かされてる魔王の頬をツンツンする。こうやって見ると赤ちゃんだが、確かに魔王の面影がある。今まで何回もこの映像を見てるが、赤ちゃんの魔王を直接見るなんて出来なかったから新たな発見だ。赤ちゃんだとは思ってたけど、こうやって見るとなかなかに可愛らしいかもしれない。
 
 まあこんなんでもパンチ一発で凶悪なケルベロスを沈めちゃうんだけどね。逆にあの光景を何度も見てなかったら、こんな赤ちゃんがそんなことをしてしまうなんて信じられなくなりそうだった。でも何度も見てるからね。こいつはこんななりをしてても魔王なのだ。
 
(まあ、時間が止まってるからどうしようもないでしょうけど)
 
 魔王の肌に触れると案外柔らかかった。モンスター共を粉砕しまくってるから、カッチカチかと思ってたが全然そんなことはない。
 
(まあこんな事をやっててもしょうがないか)
 
 私はようやく目的を果たせる。そう魔王の出生の秘密を知るという目的を。
 
(やるよ私は……ん? いやいや私の目的はアビスの力を操る事だったか)
 
 ここまで出てきた事で、私はかなりアビスの力に干渉できるようになってるんじゃないだろうか? けどここまで来たら、魔王の秘密なのか、そうじゃないのか所知りたい。別に秘密でもなんでもないのならいいのだ。それでも。けど重大な何かがあるのなら……楽しいんじゃん。それに私の好奇心が引かれてる。それだけでここから進む理由には十分だ。
 
(よし! 巻き戻し!)
 
 私は魔王の過去を巻き戻す。

転生したらロボットの中だった(ただし、でることはできません)輪廻の輪の外へ 33

(さて、入れたのはいいけどもう一度同じの見る気も起きないからなぁ……)

 とりあえずこれって、私の力……正確にはG-01の力とかがアビスの力に馴染んだから、上手く目の力が発動してそれを読み取って私はここに居る……ということだと思う。ならもっと他にやれる事があったりするかも? 
 今、私は感覚だけでアビスの力に自分の力を合わせてるんだ。そんな天才である私なら、もっと他に色々とできるだろう。

(手始めに何をしよう……そうだ、なんでここからって私思ってたんだよね)

 それは記憶の始まり部分である。だって既に魔王はゆりかごに乗せられてる。ならこの前には生まれてるだろう。まさかこのゆりかごにそのまま産み落とした訳じゃあるまいし? ん?

(そういえば魔王ってどうやって生まれたの?)

 父親が先代魔王的な感じはしてる。まあ似てないんだけど……そもそも魔王が普通につがいの間に生まれる存在かも謎である。だからどうやって魔王が生まれたの、それは興味がある。

(ん? あれ? けど生まれる瞬間って魔王視点ではわからないじゃん)

 重大な事に気付いてしまった。そもそも魔王自身には自分がどうやって生まれるなんて知るよしもないような……

(いや、待てよ)

 私は頭をぐりぐりして、考える。というか思い出す。一回見た、この過去視の魔王の事を。

(魔王は最後魔王になってたんだよ)

 私が見てなくなくても時間は経って、魔王は魔物を倒してく。ガルガルいってる魔王。そう今のこいつは野生児だ。でも……

(魔王は歴代の魔王の全部を受けついでた。それって知識や力だけじゃなく、歴代の魔王の全てなら、今の魔王の中にも、魔王が生まれた瞬間の光景とかがあるんじゃないの?)

 この逆説的な考え方、流石私。私は魔王の過去を見てるからこっちの魔王になんか引っ張られてたのかもしれない。でも私が一緒にいる魔王、この野生児ではなく、全てを受け継いだ魔王なのだ。なら、その全ての中にこの光景よりも前の物があってもおかしくない。

(よしよし、馴染んだ力をどうしたらいいんだろう? とりあえず戻るイメージを伝えてみるかな)

 私はううん……とうなりながら「戻れー戻れ-」と思う。するとなんか映像がガタガタしだした。これは私の干渉が効いてるってことなんではないだろうか?  でも戻るまでは至ってない。どうやらまだかみ合いが甘いみたい。

 ここからすりあわせていければ……

(むむ、なんか複雑な感覚だな……メチャグチャピンピンみたいな……)

 どうやら力が複雑に働く程に、私が感じる感覚も複雑になってるみたいだ。これに自分の力を合わせるとなると骨が折れそうだ。でも私は魔王の出生の秘密を暴いてみせる!!
 なんか別の目的に進み出したけど、これも必要なことなので仕方ないのだ。決して魔王の秘密を暴いて弱みを握ろうととか考えてる訳ではない。ないったらない。これは純粋な好奇心です。

転生したらロボットの中だった(ただし、でることはできません)輪廻の輪の外へ 32

 AIの必死の説得により、魔王を実験に使うのは止めた。私は魔王の頑丈さをしってるから今も納得いってないが、しょうがない。
 
(私がアビスの目玉から得たもの……か)
 
 私は考えるよ。まあ考えるまでもなく確かにそれはある。でもそれを私が理解してるかは別である。私はG-01の事もだいたい理解してないのに、更に外の力なんて理解できる訳ないじゃん。
 
 なんとなく、それがあるってのはわかるんだけどね。それにどう干渉して良いのか……
 
「よし!」
 
 私は手近な目玉に手を伸ばす。私は考えてもダメなのだ。確かにものすごく集中すれば、ちょっとずつ解読とか、力の事わかっていけるかもしれない。でもそれにどれくらいの時間がかかるかってわからない。実際勇者と魔王ってこの状態で生きてるかの……正直謎だしね。
 
 今はまだ大丈夫だとしても、時間が立つと死んでるかもしれない。だからなるべく早く助けたい。というかいつまでもこんな辛気くさい所に痛くないってのも本音だ。まあ、ここから脱出する手段もないし、まずは二人の救出……それがどうしたって優先することになるよね。
 
 私は目玉を持って魔王に向ける。
 
「考えるより、感じろだよね。まずはG-01の干渉でどんなことが起こるかを確かめる!」
 
 ってな分けで、ほんのりしてたのを確認したら、こっちもG-01経由で干渉を始める。とりあえず物理的に力をぶつけるとかは違うと思う。だから私はG-01の力を流し込んでみた。すると……
 
「きぃぃぃぃぎゃああああああああああああああああ!!」
 
 とかいう悲鳴じみた音と共に、目玉が充血してはじけ飛んだ。おいおい……過激な目玉だね。どこに声帯があったのかな? どうやって音を出したのか謎だ。きっと力だね。そんなアビスの力が声というか音を鳴らしたんだろう。
 
「うーん、ちょっと強引すぎた?」
 
 でも優しい仕方なんてしらないぞ? それとも量とか? いや、そもそも違う力を混ぜ合わせるのが致命的なんでは? 一つやってみたら、色んな可能性がまたまた増えた。考える事がどんどん多くなる。
 
「やれることからやってくしかないよね」
 
 はっきり言って違う力を混ぜ合わせるのがタブーとか言うのは、この際考えない。だってそれを考えると、全てが無駄になるじゃん。だからどうにか出来ると考える。
 
「馴染ませて~、馴染ませて~)
 
 私は次の目玉は慎重に力を通す。なんとなく、アビスの力に合わせる様にするよ。もちろん具体的な事は全然わからない。だからこれも感性を多大に含んでる。力の違いってのはなんとなくわかる。こっちはスベスベだけど、向こうはヌメヌメしてるとか……ね。
 
 だからなんとなく、ヌメヌメを目指す。そんな感じで試行錯誤を繰り返したら、ようやく魔王の過去に再び入ることが出来た。

転生したらロボットの中だった(ただし、でることはできません)輪廻の輪の外へ 31

「よし!!」
 
 私は気合いを入れてアビスの目玉と向き合ってる。私はちゃんとアビスの目玉の力を解析してる――そのAIの言葉を信じて、目玉と目玉を向き合わせて力の波動をこう……なんとなく、交信というか? そんな感じで目同士が力を与え続けてたらくずれたりしないかな? なんていう甘い考えもやってみてみたらさ……
 
「やっぱり私って天才かもしれない」
 
 そう思わずにはいられない。なにせ向き合ったアビスの目玉はなんとどんどん熱くなっていってる。私の仮説ではエネルギーを使うと熱くなるのだ。でもここまで熱くなることは多分なかった。魔王と勇者の記憶をみてるときはほんのり……位だったと思う。正確には見てるときは向こうに行ってるからそんなのわからないんだけど、かえって来た時に感じる温度はほんのり……位だった筈だ。
 
 けど今はかなり熱い。私のこの体――G-01でも熱いと感じるって相当だと思う。それにそれだけのエネルギーを使ってる筈なのに、なんと目玉自体が崩れてないのだ。魔王と勇者……それぞれの過去を一度見るだけで崩れてた目が、これだけ熱を持ってても崩れてないんだよ? 
 
 これってつまりは、エネルギーのロスなく、力をやり合ってる? 互いの目に? 多分この目の間には見えないが、エネルギーがあるはずだ。
 
 
「この間に魔王か、勇者を置けばもしかしたら戻るのでは?」
 
 私はかなり真剣にそれを考えるよ。
 
「やっぱりここは魔王かな? どっちかというと、魔王のほうが頑丈そうだしね。こいつって腕とか足とかもいでも力さえ与えれば自力で生やしそうだし。勇者はそういうのは期待できないんだよね」
 
 勇者は色々と加護を持ってたらしいが、この世界に来てしまった事で、それらがどうなったかわからない。世界を越えた訳だからね。普通ならなくなってるだろう。それに種族的にも魔王のほうが頑丈そうだ。勇者は勇者だけど、種族的には人間なのだ。
 けど魔王は生まれた時から化け物である。過去を見たからわかるが、こいつ生後数時間で自分の数十倍はでかい敵をパンチ一発で倒してるからね。どう考えても魔王のほうが頑丈でしょ。私は石になった魔王をつまむ。
 
『止めなさい。死にますよ』
 
 むむ……なんかAIに止められた。
 
「でもでも、ここには永久機関が出来てるよ! これを利用しない手はないじゃん」
『本当にあれが永久機関だと? 見ててください』
 
 しょうがないから、しばらく観察してると、熱くなりすぎたからなのか、なんか目玉の眼球とは反対側から、なんかものすごいエネルギーが放出されてこの深淵が一瞬明るくなった。
 
「なにあれ?」
 
 はっきりいってかなり魔王と勇者が危なかったよ? あとちょっと横にずらしてたら、二人とも巻き込まれてた。
 
『どんどん熱を高めてたのはそれだけエネルギーが増幅されてたからでしょう。そしてそれにはあんな脆い眼球では耐えられない』
「でも魔王なら眼球よりも頑丈だし……」
 
 いけるんじゃないだろうか? あいつ絶対に眼球よりは頑丈だって!! 私は熱く魔王を押すよ。
 
『頑強さが重要ではないです。発想は良いですし、その閃きは尊重しましょう。ですが貴女はまだ、眼球から得た物を使ってません。エネルギーとはそれだけで万能なのですか?』
 
 むむむ……AIはどうしても私に考えさせたいみたいだ。これだってかなり考えたんだけど……確かに私はアビスの目玉から得た何かをつかった訳じゃない。これは純粋な私の発想である。だからまだ足りないと……そうAIは言いたいらしい。
 

転生したらロボットの中だった(ただし、でることはできません)輪廻の輪の外へ 30

 二人の事を知ることができてなかなかに満足だけど目的はそれじゃないんだよね。二人を元に戻す為にもアビスの目の力を私は解析とかしたかったんだけど、それができたかというと分からない。
 
 なにせ勇者の時なんて一瞬だったし……何か身になった事があったかと問われても困っちゃう。
 
「私が天才過ぎたから……」
『寧ろ鈍すぎたんでは?』
「むー」
 
 AIがここぞと言うとき失礼なことを言ってきた。さっきまで黙りだった癖に、どうやら私には突っ込まないと気が済まないらしい。
 スルーしてくれればいいものを……
 
「それじゃあそっちは何か摑んでる訳?」
 
 私はそう言って内心ニヤリとした。今までAIが何も言わなかったのってAIに頼りすぎな所を改善させる為だよね。
 でも今、私と会話始めちゃった訳だ。そうなると、反応しないのは酷くない?
 
『…………』
「酷くない!?」
 
 無視の態勢に入ってるAIに私はそう叫ぶ。こうなったら――
 
「私……は二人を……たすけっ……たいんヒグッ……だよ。協力して……よ」
 
 ――これぞ必殺泣き落としである。女の最大の器は涙だと相場は決まってるのだ。しかも私は美少女だぞ。堪らないものがあるだろう。
 
『こっちはあなたのバイタルとか諸々計ってるんですよ? 嘘泣きがわからないとでも思いますか?』
「プライバシーの侵害だ!」
 
 なに私って常にAIにモニタリングされてる訳? そんなの断固拒否なんだけど。抗議だ抗議!!
 
『プチュオクミであるあなたにはとても重要なことなのですが――』
「そんな脅しに私が屈すると思ってる訳? 心外だよ」
 
 私はきっと意志の強い子だ。
 
『貴方はまだ理解してないでしょうが、G-01に縛られてると思ってるそれが間違いだとしたら?』
「どういうこと?」
 
 難しい話は止めていただきたい。理解できないから。
 
『貴方はG-01という外皮に守られてるとしたらどうですか? 私が貴方のバイタルを測定してるのも必要なことなのだとしたら』
「そんな……はったり……私は……」
『それではいいんですか? 測定してなくて? 貴方は自分の事を何も知らないのに? 人でもないのに』
「すみませんでした!!」
 
 どうやら私はそこまで強い子じゃなかったみたいだ。だって私プチュオクミとかいう謎生物らしいし。まあそれが本当かどうかも確かめる術なんてないんだけど。決定的に人間と違うところがあるんなら、信じられるが見た感じ、別に尻尾とか角とかあるわけでもないからね。
 でもだからって否定も出来ない。くう……私はどのみちAIに勝てない。しょうがないこうなってら第二の最終手段だ。
 
「あのーどうにか協力していただけませんかね? このバカな私にご教授をお願いします! いよっ、大統領!」
 
 泣き落としがダメなら、ゴマすりである。私にプライドはないのかって? どうせ誰も見てないし。この場所は私とAIだけの場所だからいいのだ。私は一生懸命、手のひらを重ねてスリスリしてる。
 
『貴方はもっと自分を信じてください。ちゃんと貴方はアビスを解析してます』
「でも……」
『言っておきます。私の中にある知識は全て貴女の中にある物です』
「私の中に……」
 
 私はすりあわせてた手を止めて、胸の中央に手を添えた。何か出来る様な気がしてきたぞ。なんかヤル気がみなぎってきた。

転生したらロボットの中だった(ただし、でることはできません)輪廻の輪の外へ 29

 ここから勇者が勇者になる前の物語が紡がれる!! とか前置きしてみるが……
 
「まあこんな物だよね」
 
 私は勇者の過去を見て既に戻ってきてた。いやーなんていうか? こう、想像してた通りというか、そこまで意外性がないというか? なんていうか、まさにザ・王道ってな感じのないようだったんだよね。簡単に説明すると、勇者はとある片田舎の出だった。そこで伸び伸びと育ってた訳だけど、結構わんぱくだった子供時代の勇者は自分のせいでその地に封印されてた邪悪な存在を復活させてしまったのだ。
 
 それのせいでその片田舎の村は壊滅的な打撃を受ける事になる。でも壊滅はしなかった。なんと勇者の中に眠っていたその力が覚醒したからだ。でもそれでも大勢の人が死んだ。勇者の両親とかもそうだ。勇者は自分の行動を悔やんだ。
 
 勇者はそのとき、その事件を解決する為にきた国の騎士の奴らに頼み込んで騎士になる道を選んだ。どうやら最初から勇者としてチヤホヤされるとかいう展開ではなかった。どうやらそこに来た隊長がなかなかのやり手で、黙ってたみたいだった。
 でもあの力は野放しにするのは危険すぎるって事で、連れてくことにしたみたいだけどね。それからは騎士団の見習いって感じで結構こき使われてた。最初からモテモテハーレムかと思ってたが……実はその通りでもある。
 
 勇者はまず顔が良いし、とても素直で……というか素直すぎる位になってた。わんぱくだった少年は自分のしでかした事を重く受け止めて、その贖罪を他の誰かを守るという行為で許されようとしてたのだ。だから何だって一生懸命やった。
 
 雑用なんて当たり前、そして訓練も必死にこなす。顔もよくて、素直で頑張り屋で……そんな奴モテないわけないじゃん。団員達には気に入られて、その騎士団の拠点の街、城都では出会いもいっぱいある。なにせ片田舎とは違うのだ。 
 
 でも流石勇者、沢山の好意を向けられたり、アプローチをされたりしてもそれを受け入れる事はなかった。自分にはそんな資格はないって感じだった。最初はただの雑用だった勇者もしばらくすると頭角を現す。
 
 大きくなってたから、それなりに年数がたったんだと思う。その頃には正式な騎士団の一員で、そして小隊長くらいにはなってた。勇者はやっぱりだけど、その騎士団でも頭一つ抜き出るような存在になってた。元々力はあったからそれは必然ではあったと思う。
 
 でも数年くらい雑用やらされてたのは、きっと最初に勇者が出会ったこの騎士団の団長のおもわく何だろう。まああの頃の勇者はまだまだ幼すぎたってのもあるかもだけど。それでも戦場に出せば戦果を上げたとは思う。でもきっと団長さんはそれを危惧したんだろう。
 
 メキメキと頭角を現してきた勇者だが、問題がなかった訳でもない。それは破滅願望とでも言い換えられる突貫だ。勇者はその力のせいで、小隊長なのに自分で全て済ませる。敵を見るとイノシシの様に猪突猛進なのだ。きっと仲間の団員が傷つくのが怖いってのもあったんだろう。
 
 自分のせいで沢山の人が死んだから、そんな事がないように、積極的に自分が前にでる。自分が前に出れば誰も死なない。でもその頃は頭角を現しては来てたけど、流石の勇者も一騎当千ってわけでもなかった。まだまだ子供だったしね。
 
 そんな勇者を心配する団員は大勢いた。問題視する声もあった。そんな折り騎士団に護衛の依頼がきた。ある地方領主の娘の護衛である。地方の領主の娘なんて、かなりの有力者の娘でもなければ、わざわざ騎士団を差し向けるなんて事はない。
 
 でもその娘は特別だった。その特別扱いされるくらいは。目が見えない娘だったけど、特別な力があったんだ。だから王都に召されて聖女になるのでは? なんて噂される尊きお方だ。……でも結論から言うとその娘は聖女になることはなかった。
 なぜなら、彼女は魔物に殺されたからだ。そして彼女によって勇者の力は完全に覚醒されて、絶体絶命の時に聖剣が召喚されてその魔物を滅ぼした。本当なら、聖女になるはずだった娘を守れなかったなんて、騎士団としては解散物の出来事だが、新たなる勇者が立った事でそれは免れた。
 
 けど勇者は、これでその存在がしれわたる事になった。騎士団にはいられなくなった。勇者は騎士団を去る。聖女の娘を襲撃した魔物はとても強力で、騎士団も壊滅的な打撃を受けた。そのことに勇者は責任を感じてた。
団長は『バカ言うな』とか言ってたが、知れ渡る勇者となった事で、勇者はその責任が自分の事の様に思った。
 
 そして自分の役目もようやくわかったのだ。最後に彼女、聖女になるはずだった娘が未来を予言してた。魔王を倒すのは勇者だと。勇者は決心して王都に招喚される。そしてここから勇者が勇者としての活躍をしていく事になった。
 
 ――――あれ? なんか案外長くなってるぞ? まあそこからは色々な仲間との出会いとか、甘酸っぱい出来事とか、勇者の心を解かすヒロインの存在とかあるけど、なんやかんやあって魔王の間まで行ったところで同じように過去視は終わった。

転生したらロボットの中だった(ただし、でることはできません)輪廻の輪の外へ 28

 魔王は先代魔王から全てを受け取った様だ。それからの魔王は、今までの野生児ではいられなかった。魔王の知識、歴史、力……そして責任、使命……そういうのを魔王は理解したんだ。それから魔王は魔王となった。そして宿敵の勇者が誕生するまで待つことになった。
 あの野生児の魔王が勇者を待つ……信じられない事だ。でも今の魔王は襲ってきた奴をただぶっ殺しその血肉を食らう奴では既にないんだよね。まあそれでも待つ意味は? と思うが、魔王の歴史に、責任に、そして使命にその答えがあるんだろう。
 
 私はいきなり場面か変わるからどのくらい待ったのかはわからない。案外早かったのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。けど、次の場面はあの勇者が魔王の前に仲間達と共に現れた場面だった。
 
(これって、私が目覚めるちょっと前の感じ?)
 
 私が目覚めたとき、既に魔王と勇者は最終戦闘してた。そこに勇者の仲間はいなかったから、これはきっとあのちょっと前。
 
「魔王!! 貴様を討つ!!」
 
 その勇者の言葉に魔王はニヤリと笑った。そう心から……それが私にはわかった。
 
 
 
「はっ!! ――はれ?」
 
 周囲を見ると、まだ見慣れたとは言えない機械とモニターがある。モニターには石となった魔王の姿がある。
 
「戻ってきたんだ」
 
 どういう基準で戻されたのかわからない。けどまあ楽しい物を見たとは思う。戻ってきたら実は魔王が復活してる。とか思ったが、やっぱりだけど、現実はそんなに都合よくは行かないらしい。過去を見れたんだし、それってつまりはこの目の力を私は使ってる? 受け取ってる? と言えるとは思う。ならそれをもっと操れる様になれば、二人を元に戻せると思う。
 
ニヤリ……
 
「これは仕方ない。二人を助けるためにはもっとこのアビスの目玉の力をしる必要があるからね。だからこれはプライバシーの侵害とか……そんなんじゃないんだよ」
 
 誰に言い訳してる訳でもないんだけど、なんかそんな独り言をつぶやいてしまう。とりあえず今回は魔王を満たし、次は勇者だろう。今の流れを見るに、きっと魔王と同じ場面までは見れるんじゃないかな? そう思って再び目を抱えようとすると目がホロリと崩れだした。
 
「ええ……」
 
 取り出した目玉はそれなりに頑丈だったんだけどな……
 
「力を使い果たしたとか?」
 
 それくらいしか心当たりがない。まあけど問題はないか。なにせまだあるし。――と言うわけで、別の目玉を勇者の前に持って行く。
 
「今度はもっと解析するぞ」
 
 そう気合いを入れる。目玉の視界に勇者をいれると再び熱くなってきた。私にそれに集中して――
 
「おらーいくぞーー!」
 
 そう言って目の前の子供追いかける。周囲には他にも四・五人の子供達がみえる。どうやら鬼ごっこしてる?
 
(え? ちょっと入るのがナチュラル過ぎて何も出来てないんですけど!? そっち上手くなっちゃってるじゃん!!)
 
 私は嘆いた。