「俺は……私は……学者で……女子高生で……殿様で……飛脚で……クラゲで……燕で……蜘蛛で……花で……私は……俺は……自分は……うちは……僕は……あちきは……某は……ナニモノ?」
ゆっくりと私は目を覚ます。何かとてつもなく意味不明な夢の様なものを見てた気がする。頭がぐわんぐわんしてる。一体全体どうなったんだっけ? よく覚えてない。確か、私は目覚めたら変な場所にいて、そしたら魔王と勇者がいて、更に二人は戦ってて、私は止めようとロボットになって……化け物と対峙した?
(うーん、意味不明過ぎてヤバイ)
どうやら頭を強く打ったみたいだ。だって話がまとまってないじゃん。なにさ勇者と魔王って中二病か……それに自分がロボット? はは……だよ。
「ちゃんと起きなきゃ――ゴボッ――ん?」
何今ってゴボッって? そういえばなんか体にまとわりついてるような? 腕を動かしてみると、ちょっと抵抗を感じる。私は髪を触ってみる。すると、やっぱりだけど、私の長い髪が浮いてる。これって……
「水没してるじゃん!! 空気を空気を! 死んじゃう!!」
私は必死に手を動かすが、足がつながってるからどこにも行けない。てかそもそもここから出る方法を知らないし。
「てか、夢じゃない!!」
はっとした。この場所は知ってる。って事は、勇者と魔王がいた事も、空獣とか言う化け物と戦ったのも本当の事……まあ今はそんな事よりもこの満ち満ちた液体が問題だけどね! せっかく目覚めたのに、今度こそお陀仏だよ!!
『落ち着いてください』
「これが落ち着いていられるか! 死ぬじゃん!!」
なんか冷静な機械的な声が私に落ち着けと諭してくる。機械にはこの焦りなんてわかんないんだ。だから私は効く耳持たない。
『今、貴女は息をしています』
「んなわけな――うん?」
そういえば全然苦しくないぞ。私さっきから水中で結構喋ってる筈なのに……だ。普通ならもうとっくに苦しくなるはず……てか、なんか苦しくないな。
「どういう事?」
ちょっと冷静に成れたからこの機械的音声のAIに聞いてみる。実際勝手にAIとか言ってるが、本当にAIなのかはしらない。
『貴女は空気の海に溺れて、苦しかった事がありますか?』
「ないけど……」
『そういう事です』
「いや、わかんないけど……」
『はあ……』
なんかAIにめっちゃため息つかれたぞ。やっぱりAIらしくないな。じゃあ何なのかといわれてもわからないけど。
『今のはとても簡単にこの状況を表しました。今のよりも簡単な表現はありません』
なんか私、馬鹿にされてない? まあぐっと堪えるけどね。
「えっと、この水は空気って事?」
『そう思って貰えれば結構です。実際は貴女の外傷を治療するためのナノマシンですが、まあ貴方にはどっちでも一緒ですよ』
うん、やっぱり完全にバカだって思われてるね。悔しい……けど、その通り過ぎて言い返せない。まあ、別に死なないのならいいけど……ん? 外傷?
「何で私外傷おってる訳?」
『それは戦闘をしたからですね』
「でも、それってこの体じゃなかったように思えたけど?』
『その通りです。貴女の意識をこの外装G-01にシステムコンポーネントして戦闘を行いました』
「はあ……だから、この体が怪我するのおかしくない?」
『フィードバックは完全には避けられません』
「ふむふむ、ちなみにどのくらいのフィードバックだったのかな?」
『左半身がなくなるくらいでしょうか』
こっわ……私は自分の左側をみる。めっちゃ綺麗な体があるけど……これは復元したの? ヤバイ、怖いから聞けないよそんな事。私は血の気が引いた。と、とりあえず自分の体があるって事を物理的に確認する為におっぱいでも揉んで落ち着こう。それがいい。
『何やってるんですか?』
「わからない? おっぱい揉んでるのよ」
『なぜ?』
「何となく?」
変な空気が流れてる気がする。AIの癖に気まずくしないでほしい。