砂漠を進む。すると砂獣が出てくる。だが、それは魔王か片手間で片付ける。それで事足りていた。複数体出てきても、魔王ならほぼ一瞬だ。そして道中、殆ど止まる事も無かったから当初の予定よりもかなりの距離を稼ぐ事が出来た。これならジャルバジャルへは二日……いやもっと早くいけるかも?
まあどっちみち一回寝るときは来るから、その時にどうなるか見ておこう。
「ふう、暑いな」
そういうのはこの部隊で一番偉い奴だ。あれは確かバジュール・ラパンさんの息子だ。けどバジュール・ラパンさんはとても出来た人なんだが……正直あの長男は元の世界でみた、腐った貴族の匂いがする。
「おい、飲み物だ」
彼は乗り物……なんか平べったいデカいトカゲみたいなのを二頭使って自分のそりを引かせてる。豪華な奴。そのまま寝れる様な空間に女を侍らせてそいつらに自分の世話をさせてる。暑いとか言っときながら、その侍らせてる美女に風あおって貰ってるからね。
ほかのこぶ付きの動物に乗ってる賞金稼ぎの奴らやトカゲにのってお前の周りを囲んでる軍の奴らは鎧まで着て炎天下の中にいるからね。一番快適な奴が一番飲み物を消費してるのがなっとくいかない。
まあ偉い奴とはそういう物だ。俺や、ほかの奴らはわかってるから文句なんていわない。まあ後で全然役に立たなかったって報告はするけどな。あのバカ息子はバジュール・ラパンさんがこの作戦に自分を参加させた意味をわかってない。
「おい、俺にもくれ」
そういうのは魔王である。今さっき一仕事終えたから喉が渇いたんだろう。ズカズカとバカ息子のところに上がり込み勝手に座り、そして飲み物をひったくってグビグビとやる。
「おいおい、酒じゃねーのか?」
「酒は行軍中はダメと言われましてな。いや、それよりも流石魔王殿! アナタさえ居ればこの作戦楽勝ですな!」
「まあな! おいもっともってこい!」
「おい、魔王様がおっしゃるとおりにしろ!」
なんかそこには親分と子分が出来上がってた。あのバカ息子、どうやら魔王に取り入る事にしたようだ。どうせ脳筋みたいな魔王を上手く使おう……とか裏では考えてるんだろうが……魔王はあいつに制御できる様な奴ではない。
まあけど、ある意味魔王の子分の位置にあのバカ息子が収まってるのはある意味都合が良い。なにせそれは魔王の命令には従うと言うことだ。ああいうバカは戦場で自分の周りだけに戦力を固めたりする。それは不安だからわかるが……上が無能だとわかってても軍の奴らとかは従わない訳にはいかない。
そんな時でも魔王が言えば、それにあのバカ息子は従うだろう。別にあのバカ息子が勝手に死ぬのは仕方ない。だが、真面目に仕事をしてる人達が無駄死にするのはゆるせない。魔王は脳筋のようで考えてる奴だ。まあそれが他者の命を守る事に働くかはわからないが……それでもあのバカ息子よりは有能だ。
俺達はそんなバカを守りながら、砂漠の真ん中にテントを張って寝る準備を進める所まできた。