「ねえねえ、アズバインバカラってどんな所なの? 砂獣と戦ってるんだよね? なにか楽しいお話聞かせてよ!!」
そう言ってきたのはピローネだ。子供らしい無邪気な笑顔。この中央には砂獣の危険ってやつがほぼなさそうだからな、そこら辺、よくわかってないんだろう。
確かに中央は便利そうだし、快適そうだけど、ピローネくらいの年だと刺激がなくてつまらない……とか思っちゃうのかも? まあそれはどう考えても贅沢な悩み何だけどな。
だって中央以外の街では毎日砂獣に怯えてるわけだからな……ここがどれだけ恵まれてるか……この食事だってそうだ。大層なお味出し、量だって……それになんかいつの間にか補充されてるんだよね。最初はあのメイドやら執事がなんのためにいるかとおもったが、今はちゃんと給餌を実はちゃんとしてた。
来た時に気づかなかったのは、どうやら認識阻害の魔法を使ってるからだ。てかそのせいで、俺以外には気づいてるやつがいないかもしれない。なんでそこまでこの人達の存在を消したいのかはわからない……わざわざ食事を補充しする時に、あからさまに扇子を振ってるペニーニャイアン。けどこれは別に魔法で生み出した食事ではない。
だからちゃんと給餌してるメイドさんが持ってきてる訳だけど……
「おお、更に料理が!」
「すげー!」
とかこっちの奴らがびっくりしてる。俺は種が見えてる仕掛けをバッチリ見てる感覚だ。てかそのとおりでしかないが……そんな中、料理を運んできたメイドさんとバッチリと目が合う。
「「…………」」
お互いに吸う数瞬固まる。でもこれは気づかないフリをしたほうがいいんだと俺は気づいた。だってこれに気づいてるとなると、それは多分ペニーニャイアン的に恥だろう。だって種がバレてることを意気揚々としてたんだ。それは滑稽……というものじゃないか。
そしてそんな滑稽な事の責任を彼女が理不尽に受ける可能性は高い。そしてその責任はたぶん簡単に命へと関わってくると思う。ここへと最初に来た時に見たのは、殺された同じ様な格好の男女だった。ここでは使用人たちの命はとても安い。
だからペニーニャイアンに恥をかかせたとあっては、命が無くなる可能性は高い。だから俺は何もなかったかのように、料理を手に取り、舌鼓をうつ演技をする。
それをみたメイドの女性は気を取り直して、空いた皿を引いて去っていく。俺はチラッとペニーニャイアンを見る。どうやら、こっちを見てはなかったようだ。ピローネが賞金稼ぎの皆の武勇伝(盛りまくり)に興奮してたのが功を奏したようだ。
料理も美味しくて、酒も進めば、どんどんと緊張的な物はほぐれていって、場は盛り上がってる。自分たちの武勇伝を自慢気に話せるのは賞金稼ぎの皆も気分がいいんだろう。
まあ普段は安い酒しか飲めないしな。そもそもが水分はとても貴重だし……でもここでは空っぽにしたらいつの間にか満タンのジョッキがある。しかも金はかからない。
それは進んでしまうだろう。でもだからこそ危険というか……ペニーニャイアンは笑ってるが、なにか企んでる事は明白だ。てか合法的に俺達を処分する方法があるんでは?
毒なんて必要ない。酔って無礼働かせれば、俺達を処分する名目的にはこいつ的には十分なのかもしれない。
「おっと……」
そんな事を考えてると、賞金稼ぎの一人が興奮して、腕を奮って、臨場感を出してた時に、近くの更に触れて料理を飛ばしてしまった。そしてそれがなんと、ペニーニャイアンのほうへ……直接彼女にぶつかはしなかったが……飛沫が彼女へと飛んでた。
「ひっ!? すすす――しゅんません!!」
思わず立ち上がって頭を下げる。でも……それで済むわけはなかった。
「落ちなさい」
それだけいうと、賞金稼ぎの彼は落ちた。どこに落ちたかはわからない。ただ、黒い鏡が足元に現れて、それに落ちたようだ。俺は流石にすぐにその鏡が消える前に近づいて手を突っ込んだ。
なにせこの鏡がどこに繋がってるかわかったものじゃない。
もしかしたら針の山に落とすかもしれないし、次に会える機会があっても、生きてるとは限らない。だから動いた。
誰もが反応できてないタイミングでだ。突っ込んだ手に感触はなかった。だが前の時に閉じきるまではきっとこの鏡の設定は変更できないと学んでる。ならこの黒い鏡の向こうに落ちたやつはいるはずだ。
俺は必死に手を伸ばす。