「シャラク?」
「ワンワン!!」
シャラクと呼ばれたスコティッシュ・テリアが現れた平賀式部に突撃していく。彼女は膝を折って犬を呼び込んでその胸に抱え込んだ。
『ボスボス!』
そういう声が野乃野足軽には聞こえてた。どうやらこのスコティッシュ・テリアの飼い主は平賀式部らしい。
「えっと……野乃野くんがどうしてこの子と?」
「それは……」
どうしたものか……と野乃野足軽は思った。どこから説明したら良いのかって事だ。もしかしたらこの様子だと平賀式部はこの犬が誘拐されてた事を知らないのかもしれない。でも、マンションで飼ってるって事は散歩とかで外に行くしかなくて……なら誘拐されたときも散歩とかの時だと野乃野足軽は推理した。そうなると少なくとも、いなくなってたとは気づいてるはず。
「もしかして、野乃野君がシャラクを見つけてくれたの?」
「あ……ああ、うん。なんか懐いてきて?」
嘘は言ってない。何故かこの犬、野乃野足軽にめっちゃ懐いてくるからだ。実際誘拐の事を言おうかどうか……迷う野乃野足軽だ。実際言ったほうがいいのは分かってる。助け出したとはいえ、あのままだとどうなってたか……でもそんな事があったと言ったら、平賀式部には刺激が強すぎないだろうか? とか心配でもある。
「そっか……野乃野くんの話し、してるからかもしれないです」
「俺の……話し?」
なんかドキッとするワードに胸が高鳴る野乃野足軽。だってクラスでも話題で学校でも上位の美人の平賀式部が家でも話題に出すとか聞けば、テンションが上がるのは男子として当然だろう。
「そうだ。お礼をしないとですね。家に来てください」
「ええ!? ……いや、それは……」
「シャラクを見つけて送ってくれたのに何もお礼をしないなんて出来ません。遠慮しないでください」
そう言って平賀式部は自分のスマホかなにかをピッと扉の横の機械に掲げるとドアが開いた。
「さあどうぞ」
そういう平賀式部についていくしか野乃野足軽には出来ない。それに実際、行ってみたい! という気持ちはあった。クラスの気になる女子の部屋……いや家に男子高校生は興味津々なのだ。