「離れて! 離れてください!」
草陰草案がそんな風にいう。けど流石にそんな小娘の言葉を警察の人たちが聞くわけ無い。彼らは彼等で市民の安全を守る……という使命がある。自分たちが下がってしまったら、それこそ次に被害を被るのは一般人だという事がわかってるからなんとかして自分たちが止めないと……おもってそうだ。
けどこの事態ではその考えは危ない。なにせ力は無差別なんだ。そして普通の人達は『力』に対して無防備である。なにせ力に対してなんの反応もできない。だからこそ草陰草案も離れて……といってるが、混乱しだした警官隊の人たちにはその言葉は届かない。
「やめろ!」
「どうした!?」
「おい……あ……ああ……があああああ!!」
「うわああああああ!?」
さっきまで自身とともに仲間の暴走を止めようとしてた仲間……同僚……そんな彼らもいきなり苦しみだしたと思ったら、そんな仲間に押し倒されたりした。それから噛みつかれたりしてる人もいるが……
「むちゅーむちゅー!」
「うわ!? なんだ!? うわわあああああァァァァああああむちゃー!!」
なんかヘルメット……バイクとかの普通のヘルメットとは違って顔の前に透明な板があるような……そんなタイプのヘルメットがガシガシとぶつかり合う音がなってる。けどそれをおかしくなった人は意に介さずに同僚にキスを迫りだしたやつがいた。それは勿論男である。もしかしたら胸に秘めてた劣情……想い……そんなのが表層に現れて来たのかもしれない。
そして最初は拒否してた側も、なんとその力に当てられておかしくなってしまってる。口から舌を出して、なんかレロレロとしてた。
いっとくけど男同士である。きもちわる……と草陰草案もおも――
(きゃああああああBL! リアルBLじゃん!?)
――草陰草案は興奮してた。どんどんと混乱が警官隊にまで広がってるのに、それどころではなさそうだ。おかしくなっていく同僚たちにどうしたらいいのか……その判断はこの現場を指揮してる人にもわからないようだった。
「くっ、後ろに引こう! 草案ちゃんをよろしくおねがいします!」
「え? ひゃあ!?」
その言葉に黒服の人は草陰草案を抱えて走り出す。180を超えてる筋肉ももりもりの存在に丁寧に抱えられて混乱が更に広がりつつある場所から草陰草案達は撤退することを選んだ。
もちろんその間にも対処法を警官隊の人たちに伝えるが……それを実行するかどうかはわからない。