「全くしょうが無い奴らなんだから!」
そんな事を言っとかないと、やってられない状況だ。なにせ今の魔王も勇者も、この世界の力の塊が無差別に暴れてる状態みたいな物だ。はっきり言ってポニの集合体の鯨よりも厄介だ。向こうにはこっちに敵意があって、世界を守るって意思もあった。けど今の勇者と魔王にはそれがない。二人はその力をぶつけ合って、この世界を破壊してる。
同じ力の筈なのに、勇者には眩しい程の光が集まり、魔王にはおどろおどろしい闇が漂ってる。あれは二人の魂の影響を受けてるってことだろうか? 必死に二人ももしかしたら意識を引き上げようとしてるのかも。でもその鍵を見つけられずにいるみたいな? わからないけど、そんなイメージを持っておこう。
「私なら、鍵を開けられる?」
『鍵? 少なくても、道を示す事は出来るでしょう。彼等はきっと迷ってますから。殴ると同時に力を流し込んでください』
「おっしゃ!!」
頭で考えてた事をそのまま言ったから、一瞬AIがきょとんしたけど、AIはちゃんと私の意思をくみ取ってくれる。てか、そもそもAIは私の思考を見てたような……いやその確証はなかったっけ。とりあえずやる事は単純明快だ。力を乗せた拳で殴る! こんなわかりやすい事を今までAIが言ったことがあっただろうか? いや無い!! いっつもいっつも難しい言葉で言ってくるAIがこんなわかりやすい……そして単語も短い文で言ってくれるなんて初めてだ。まさか……私のIQに併せて? それはそれでイラッとするな。
まあけどそんな事で怒ってる場合ではない。時間を掛けてると、世界とやらが二人の体を良いように使うらしい。鯨からポニを奪い取った二人だが、そのおかげ世界の意思の介入を許してる。だから再び私が力を打ち込むのだ。私は一直線に二人に近付いてく。なにせ二人は周囲なんて見えてないかの如く、攻撃をぶつけあってる。
今なら簡単なんじゃない? と思ったわけだ。なにせ私はG-01。その性能は折り紙付きだ。まあ今は色々とガス欠が近い状態だが、速く動くくらいできる。それに今の私なら、それに力を裂くという器用な事だってできる様になった。
別に二人を殺す程に強く殴る必要も無いんだ。刺激と力を送ればこっちの勝ち。なら、スピードに全振りしたって問題ない!!
「二人とも目を覚ましなさ――――ってちょ!? まっタイム!!」
近付いた瞬間、二人がこっちに攻撃してた。しかも見事に連係してだ。やっぱりあんた達仲良くない!? 魔王がでっかいエネルギーを放って来たのはAIの予測線でなんとかよけれた。ギリギリでG-01の装甲が巻き込まれるが、それでもなんとか耐えた。でもそのエネルギーの周囲に勇者の奴が光の力を放ってて、それは気付いたらG-01に穴があいてた。
前は二人の攻撃なんて蚊ほども効果なんてなかった。けど、今は違う。それを実感した。二人は私以上の力を今は内包してる。このままじゃこっちがやられると肌で感じだ。そして二人の邪魔者を排除する動きはまだ終わってない。
黒い霧が周囲をつつむ。そして次に光が輝いた。その瞬間、目の前が真っ赤になった。爆煙の中から、G-01の腕がこぼれ落ちていく。