空に浮いてる二人は実際その力を知ってないと、二人と判断しようがないものだった。なにせ、全然違うし。なんか勇者はとても眩しい発光体で、魔王と思われる方はドロドロとしたヘドロというか……そんな汚い物だった。格差が酷い。一体あれは何を象徴してるのだろうか? まあわかりやすいけどね。
「ん?」
私は安心感……というか、よかったねって感情を出して二人に声を掛けようとしたら、なんか二人して争い始めた。おいおい、何この状況でやっちゃってるのよ? てかあの二人、向こうに向かってた鯨の放ってた力だってぶっ潰してここに来たんだろうし、力の大きさがヤバいね。
でもいきなり顔合わせてたらやり始めるとか――野獣かなんかか?
『彼は魂と言う存在を保ってるだけで、記憶や諸々が還って来てないのでしょう。そこら辺はタイムラグがありますから』
「ん? その消えていく記憶とか戻される物ってどこにあるの?」
『それは世界の核心、宇宙の真理そのものですよ』
なにその意味深な事。いや、実際意味深しかないけど。でもどうやら、そこら辺は深すぎてなんか説明とかしてくんないらしい。
二人は二バチバチとその力を惜しげもなく空中でぶつかりあって、周囲に影響を与えている。鯨が止めようと動き出すが、どうやらサンクチュアリを保持してるらしい二人は鯨の攻撃からポニを奪い取る事が出来るらしい。不味いねあれは……
「ポニ子は中に入ってなさい」
一応二人に押し込めたポニは私の影響を色濃く受けたポニの筈だし、あんなに簡単に純なこの世界のポニを奪えるのはズルい。私では出来ないよ。あれがこの世界のサンクチュアリを得た存在の特権か。そもそもが私の影響を受けてもサンクチュアリは得られるんだね。今更だけど……きっとポニという存在がこの世界そのものだからだろ。
まあサンクチュアリを得られないと、この状況を切り抜けられなかったし、思惑は当たってたわけだけど……こうなるとはおもってなかった。
『このままでは不味いです』
「見てればわかるけど? こっちもとりあえず逃げとく?」
あの二人の喧嘩はもう決戦レベルになってる。世界終末レベルだよ。二人のせいで、木の集合体がどんどんとハゲていってる。哀れな。二人はただぶつかってるだけだ。魔王はともかく、勇者はもっと頭良い戦い方をしてた気がするが……まあ魔王もああ見えて戦闘バカなだけあってそこら辺は考えてたと思うけど、今は二人ともただ本能のままにぶつかっている。そしてその余波がとんでもない。
二人は多分だけど、この木の集合体の力ももぎ取ってる? 他のヴァイスが枯れている。
『そんなことをしては二人がこの世界に取られますよ』
「どういう事!?」
『あの二人はまだ自分たちを取り戻していません。それなのに、貪欲にこの世界の力を取り込んでる。そうなると世界の意思があの二人の新たな体を支配してもおかしくはない』
「なるほど……」
鬼の居ぬ間なんとやらって奴か。私の影響があるポニだからこそ、二人の覚醒を待つことが出来たのかもしれない。私には別に二人を支配する気はなかったしね。純粋な助けたいって気持ち百パーセント! ほんとだよ?
「どうやったら二人の覚醒を促せる訳?」
『どうでしょうね……アナタのポニがまだ残ってる内に内側から衝撃を与えて見るとか……でしょうか?』
ここでショック療法なの? 原始的過ぎない? そもそも……さ。
「私、触れないと其れ出来ないけど?」
『頑張ってください。二人の行動を解析、分析して予測線は出しましょう』
「しょうがないか。全く世話が焼ける二人だよ!!」
私は最後の力を振り絞って二人に向かう事にした。