「サーザインシャインインラ」は協会が施した結界に守られてるはずだった。協会は基本、中央以外を見下してるが、それでも必要とわかってるから、慈悲と称して施しを外へと向けてる。そしてその慈悲が手厚かった街がいくつかある。
その一つがサーザインシャインインラだ。残念なことにアズバインバカラやジャルバジャルはその中には入ってない。でもおかげでG-01達が入り込めたと言える。もしも協会に優遇されていたならば、そこの上の人達も教会の賄賂とかに使って沈んで……まとも人達はいなかっただろう。
そしてこのサーザインシャインインラは豊富な水源があることで、中央以外を支えるためにずっと生かされ、優遇されていた。でも今その繋がりは絶たれようとしてる。
サーザインシャインインラの外には見渡す限りの砂獣がうごめき、今か今かと蹂躙する時を待っている。そして待ってる居る――という行動が異常だ。砂獣の波……いや大波は起ったのなら、止まることは無い。
なにせ砂獣に知性なる物は無い。ただ目の前の敵……人間を食い殺すことだけしか考えて無い。それが奴等だ。だからこそ、この状況はあり得ないと……サーザインシャインインラの上層部、ひいてはそこの教会の神父はわかってた。そもそもが教会の守り、このサーザインシャインインラを守ってた結界が剥がれたことがその証拠。
結界があれば、たとえ波が起きても救援が駆けつけてくれるまでは耐えられる筈だった。中央はサーザインシャインインラを見捨てないのだから、結界さえあれば波が来たとしても、ここが滅ぶことは無い……と言うのがサーザインシャインインラに住む者達の考えだった。
実際、ただの住民達には砂獣達は結界があるからこそせめてこれないのだ! ――と嘯いていた。なにせ結界は視認できる物では無い。だから無くなったからと言っても、それを住民達が知る術はない。上が発表しない限りは。
そして上はそれを発表しないと決めたようだ。発表したら住民の制御が出来なくなると判断したんだろう。住民は結界があるからたとえ街の外を囲ってる砂獣達が一斉に攻めてきても耐えられると思って、それを心の支えにして避難しているのだ。それが既に無い……何てことを知らせたら……一体どうなるだろう?
絶対に愉快なことにはならないだろう。
でも事実はそんな住民のことを思ってのことじゃない。一番混乱してるのは上層部の奴等だった。どうやって自分達が助かるか、どうにかして教会へと連絡を取る手段を彼らは模索してる。自分達が切られたなんて彼らは信じることが出来ない。
なにせ自分達は……いやこのサーザインシャインインラと言う街はこの世界の為に必要だからだ。でも教会の神父は一人だけ何かに気づいたようだった。
「これは絶望では無く、救済への道なのでは? 教会が探し求めて、得ようとしていた太陽への道。それの目処が立ったとしたら……こんな世界にしがみつく必要は……ないですか」
と言った。