子供にはつらすぎる光景というか、状況というか……はっきり言って子供にここまでやるかって感じだよ。なにせ全身血だらけだし、岩に杭で押し付けられてる両の手はすでに紫に変色してる。もう腐ってない?
それによく見るとムチでできただけじゃない傷もたくさん見える。それこそ火傷みたいな傷だ。あぶられたりそれか、熱々のコテでも押し付けられたのか……今ここには誰もいないから助けるのは簡単だけど……この子供を助けるとなるとそれなりのドローンを集めないといけないよね。それにこの子供自体に光学迷彩をかけることはできない。
だから流石にこの子供を助けるとなると……リスクがでかいね。本当にこの子供がこのサーザインシャインインラにかかってた結界を壊したというのなら、この子供自体に疑惑がこっちとしてもある。それは……
(この子供が実は教会に繋がりがあるのかもだし)
――そうなるとむやみに助けるのは気が引ける。もしかしたらそれを狙ってる可能性だってあるかもしれないじゃん。サーザインシャインインラを滅ぼすことで、地上の水の供給源を絶ち、そして哀れな被害者を装うことで、救出にきたアズバインバカラの人たちに保護されてそっちに侵入するっていうね……穿った見方なのかもしれないけど、アイツラならそのくらいやりそうな気はするよ。
子供を使うのも教会はためらいなんてしないだろう。問題はこの子が元々のそういう役割としてサーザインシャインインラへと送り込まれた子供……なのか? ってことだ。もしかしたら子供の見た目をしてるだけで魔法で子供に見せてるとか、成長を止める何かをされてて実は中身おっさんとかでも有り得そうな気がする。
まあスキャンした感じ、完全に肉体年齢は子供なんだけどね。実は長く生きてました――系の人たちは魔法があればできるらしい。でも、それを維持するのは基本外見で、内蔵とかは常に動いてその年月分の劣化が起こるみたいだ。
細胞分裂の回数とか? なんかミトコンドリアのなにかとか……まあなんかその肉体の年令を調べるすべはG-01にはあるみたいだ。わかりやすく言えば、人間の肉体にも、樹木の年輪みたいなものがあるってことだろう。
年輪を見れば樹木はどれだけの時を生きたのか、わかる。けど外側からじゃわかんないじゃん。せいぜい大きさだけだ。でも年輪はごまかせない。つまりはそういうものが人間にもある……というか生命にはあるんだろう。
それのデータがちゃんとG-01にはあってそれに照らし合わせて観ても、彼はどうやら子供である。でもそうなると……この子はかなり可愛そうなことになってるということになる。だって別に教会に今日のために送り込まれた刺客ではないとしたら、この街のただの子供ってことだし……もしかしたら教会で生まれた時から教育されたエージェントという可能性もあるけど……どうだろう。
(うん?)
そんなことを思ってるとなんか目の前の子供がいきなりビクンビクンしだした。え? なに? まさか痛めつけられて興奮する系の人? その幼さでその性癖はなかなかに難儀だね。とか思ってるとなんか耳からサソリが出てきた。
(いやいや、どうやって入ってたのよ!?)
というくらいにはでかいよ。子供の頭くらいはあるよ。それがハサミを見せて、おかしな動きをして頭から全身をゆっくり出してくるさまは軽くホラーだよ。でもこれではっきりしたね。よかったむやみにドローンの光学迷彩を解除しなくて……解除してたらこいつ出てこなかったかもしれない。
「かくほー!!」
私はドローンにそう命令して教会の放った刺客であろうそのサソリをドローンに回収させる。