「まだ正気を保ってるんですね」
なんかプクーと頬を膨らませて勇者を見てるヌメリアさんの中の人格。どうやら自分の裸……そして自分の秘部を開け晒してるのに、それでもまだ正気を保ってたことがご不満なご様子だ。それだけ自分自身? いやヌメリアさんの体に自信があったんだろう。
「別にそんなに不機嫌にならなくてもいいですよ。貴方は本当に綺麗ですからね。視界に入れてるだけで、体の内側から何かが湧き上がってくるような、そんな感覚があります」
「そうそれです。それに身を任せれば、とても幸せになります。我慢なんてしなくていいんです。気持ちよくなることは、幸せてってことですから」
そう言ってなんとかその内側から湧き出すなにかに身を委ねさせようとしてるヌメリアさんの中の人格。普通ならそれに抗うことなんて多分出来ないんだと思う。人間は欲望に理性が勝つことが出来る生物だと思ってる。それが人間である理由というか、証明と言うか……だって欲望に身を任せて誰もが生きだしたらきっと社会というのは構成できないと思う。
それこそ野生動物みたいに、精々群れを為すのが限界だろう。人間を人間足らしめてる要素。それはやっぱり欲望に負けない理性なんだよ。でもどうやら、ヌメリアさんの体やら、容姿、そしてその術式は人の欲望を何倍にも増幅してるみたいだ。
理性というタガを決壊させて欲望に支配させる。そうなると、人は思考なんてできなくなる。それはまさに獣だよね。
「幸せ……か」
「幸せですよ。この世界には辛いことが多すぎるから……私と重なる時間だけは誰もが幸せになる」
絶対の自信。それが垣間見える発言だ。私は女として、それが言えるだろうか? 私は自身の体を見るよ。まあ主におっぱいだけど……あのボカンとした爆弾に比べたらやっぱりね。私は女はおっぱいだけじゃないと思ってるよ。
けど男がおっぱい好きなのも知ってるよ。あの勇者でさえ、ヌメリアさんのあのおっぱいには劣情を催すようだからね。魔法の効果を打ち消してるのはずの勇者でもそうなのだ。それってつまりは男の本能がそうってことだと思う。
「全てを忘れられる瞬間、それは確かに幸せなのかもしれない」
なんか肯定してるようなことを勇者が言い出した。やっぱり勇者にもそういうすべてを投げ出したくなる瞬間があるのだろうか? てか勇者だからこそありそうな気はするね。だって勇者はそれこそ勇者としてその立場的に、色々と……ね。誰もの見本とかにならないといけなっただろうし。そして実際、勇者はとてもいいやつである。
私も勇者には頼ってるところがある。魔王のやつは比較的自由にやってた感じがある。なんか勝手に抜けてったしね。でも勇者はそういう事しないって安心感がある。それに私も甘えてるのかもしれない。
「でも私には体を重ねる……とか出来ないからね」
出来なくないかもしれないが……私はあのヌメリアさんみたいに貞操観念ぶち壊れてないしね。ヌメリアさんに興奮してるらしい勇者をみて、勇者にストレスを発散できる様な、そんな日を作ってあげようって思った。