「うわあああああああああああああああああああああ!!」
ガバッと野々野足軽は目覚めた。寝汗をびっしょりとかいてその汗が布団を湿らせてた。そして息はとても荒い。差し込む晩夏の日差しを睨んで、そして頭をかいた。
「夢?」
そう思って天井を見る。そこは何も変わらない天井があった。もちろん穴なんて空いてない。
「すり抜けたもんな……」
そうつぶやくが、野々野足軽はあの生々しさを鮮明に覚えていた。だからなんとくなく……そんなことは絶対に無理だと思ってたが、なんとなく、手を天井に向けて「届け」と望んだ。
「え? わっ!?」
するとなんと野々野足軽の体が浮いた。でもほんのちょっとだ。それこそ、ベッドから五センチくらい。とても天井に届きそうはない。けど……
「浮いて――」
「おにいうるさい!」
「――うわ!?」
五センチ程度でも落ちた衝撃はあった。でも幸いだったかもしれない。五センチ程度だけだったから、きっと彼の行動はいきなり扉を開けた妹には見られなかっただろう。
「いきなり開けるなっていってるだろ小頭!」
彼女の名前は『野々野小頭』(ののの こがしら)中学三年生の足軽の妹だ。活発でこの夏のせいで小麦色に焼けた肌が健康的な部活に打ち込む系女子だった。だったというのは、この夏で彼女の中学での部活動はおわりを迎えたからだ。
「おにいが朝から叫ぶからでしょ!? なんなのよ一体!」
「べ、別になんでもねーよ」
「どうせ変な夢でも見たんでしょ? あまりにも真面目な性格してるから夢でしか刺激ないもんね」
「どういう事だ!」
「つまんない奴ッていってんの! 一度は本気で何かに打ち込まないから、そんなつまんない顔してるのよ! んべ!」
そういって小頭は扉をバタンと勢いよく閉めてさっていった。嵐のような奴だ。あれでも昔は「おにいおにい」といって足軽の後をついてきて可愛かったのに……と足軽は思う。
「なんなんだよあいつ……」
でも確かにいきなり朝に叫んだら、様子を見に来るのは普通か……と足軽は思った。
(ということは心配してくれたのか? いや、まさかな)
とりあえず小頭の事は置いといて、さっきの現象を思い出してみた。
「確かに、浮いたよな?」
誰かにいうでもなく、確認するように足軽はつぶやいた。そしてもう一度……と思って今度は「浮け」と思ってみた。するとふわっとやっぱり五センチくらい浮いた。これ以上上がらないことに安心もしたが、どうやら上がらないんじゃなく、上げられないみたいだ。
「くはっ……はあはあ……」
ちょっとの時間浮いてただけのに疲労がやばい。足軽は自分の心臓が今まで感じたことないくらいに早く動いてる事を実感してた。とりあえず落ち着くまで待って……
「足軽! 起きたのならさっさとご飯食べなさい!」
そんな風に親に言われて、とりあえず朝飯にすることにした。なにせあれだけでめっちゃ疲れるのだ。なら、エネルギーは大切では? と思ったんだ。足軽は「すぐ行くよ」と返事して朝食に向かった。