「いる?」
そんな事をいって扉をちょっと開けて頭をのぞかせてくる野々野小頭。ベッドに寝転がったままの野々野足軽を見つけて、ムッと頬を膨らませる野々野小頭。すると彼女はバァン! と扉を開けてズカズカと野々野足軽の部屋へと入ってきた。
「ちょっと、聞いてる!」
野々野小頭はずっと寝てる……様に見える野々野足軽にイライラとしてるらしい。自分が呼んでるんだから、さっさと起き上がれ――とでも思ってるのかもしれない。
「なんだよ?」
寝起きの様な態度を取って野々野小頭に反応する足軽。
「ちょっと相談があるんだけど?」
「それが相談する奴の態度か?」
ずかずかと入り込んできて、無作法な態度をとる……それは野々野足軽にしたら相談する奴の態度ではない――という事だった。あたりまえだ。
「むむ……でもこの前は……」
「この前は、まだお前も素直だったし? それに緊急事態だったろ? 今回はそうでもなさそうだし……」
「え? 私が何を言うか知ってるの?」
ギクッ――と野々野足軽はした。しまった――と思った。今この瞬間に小頭のやってきた理由をわかってるのはおかしい。これは完全な墓穴。でもなんとか頭を回転させて野々野足軽はごまかそうとする。
「いやいや、ほら、そんなに緊急事態ってないだろ? だからどうせ今回はくだらないことだって思って……」
「くだらないって何よ! じゃあ何も知らないんでしょ!? お兄ちゃんのバカ!! もういい!!」
野々野足軽は自身の事を軽く見てる……とか思ったのか、小頭は足軽が言ったことに腹を立てて、すぐに部屋を出て行ってしまった。その背中を見送って野々野足軽はポツリとつぶやく。
「まあ、俺じゃなくても別にいいよな」
きっと野々野小頭は別の人に頼むだろう。小頭は別にそんなに友達がいないってわけじゃない。草陰草案は野々野足軽的にはそんなに友達いなさそう……と勝手に思ってるが、妹である野々野小頭は自分とは違って友達がたくさんいるということを知ってる。
だから野々野足軽は自分がダメだったら、他の……それこそ同級生の男子とかに頼むのだろうって思った。もしかしたらそれで淡い恋が始まるかもしれない。
「うん、これも兄離れだな」
そう自分に言い聞かせて、野々野足軽は再び力の訓練に戻った。小頭の事を考えてたせい、そして色々と無駄に脳に情報を流し込むという訓練のせいで、野々野足軽は自身のスマホが何度も鳴っってることに気づくことなく、その日は終わっていった。