「草案ちゃん! 草案ちゃん!? いる!? いたら返事して!!」
そう言って野々野小頭が瓦礫が積み上がってる場所へと声をかける。野々野小頭は半分に折れてしまってるスマホを握りしめながら、目の前の光景を見て、涙をこらえてた。
「早く、退かさないと!」
「待て待て」
無闇に瓦礫に近づこうとする野々野小頭を足軽は止めた。それに対して――キッと鋭い眼光を向けて来る野々野小頭。
「何!? 邪魔しないでよ! あそこに居るかもしれないんだよ!? てかあの人の変な棒もあの瓦礫を示してグルグルしてるじゃん! アレってそういうことでしょ!?」
「変な棒……」
なんかチャブ氏が野々野小頭の言葉にちょっと傷ついてる。今の時代、中学生はダウジングなんて知らないらしい。せっかく自信を取り戻してそうなチャブ氏が再びぐさっとさされたのは気の毒だが、野々野小頭には他意はない。ただ友達があそこにいるかもしれない――その思いしか野々野小頭にはないんだ。
勿論、チャブ氏達は、大人としてそこら辺もわかってるだろう。だから変な棒とかいわれたが、チャブ氏はこういい出した。
「野々野……ちゃん……いや、野々野さん? でもお兄さんもいるし……ここは小頭ちゃん? こんなおっさんに名前呼びなんて嫌……か?」
「なんでも良いですよ……」
チャブ氏は野々野小頭をどう呼ぶか……勢い込んで声をかけたが、それが定まってなかった。実際野々野兄妹が揃ってるせいである。確かに女の子を下手に名前呼びなんてしたら、この時代それだけでセクハラ言われてもおかしくないかもしれない。
それに基本、おっさんたちはオタクなのである。なかなかいい歳してるが、女性と話したことなんてそんなにない人たちである。だから困った。けど「なんでも良い」と許しがでたから、とりあえずチャブ氏の中では『野々野小頭』を『野々野さん』『野々野足軽』の事を『野々野くん』と呼ぶことにした。
「ええっと、すまん、俺のせいで。けどお兄さんはきっと崩れてる所に不用意に近づくのは危険だと……そう思ったんだろう。君はそこにいてくれ。俺たちが瓦礫をどかす。それに、こんなのは嘘だと思うかもしれないが、君の友達はまだ生きてるよ」
「つっ!? そんなの当たり前です!」
「――ご、ごめん」
そう言って野々野小頭は腕で目をこすりつつ、後方に下がった。それに野々野足軽もついていく。妹を心配する兄……という感じだ。野々野小頭を追いかけるさい、野々野足軽はチャブ氏を見た。すると彼は野々野足軽に頷くような仕草をしてみせた。
それが何かはよく野々野足軽にはわかんない。多分「妹を守っていろ」とかそういうことなんだろうと野々野足軽は思った。野々野足軽の視線は今さっき言った「まだ生きてる」って本当なのかな? って視線だった。
いや、野々野足軽はわかってる。その答えを知ってる。けど、チャブ氏にはわかんないはずだ。けど……なんかその自信はなんか野々野小頭を安心させるためだけの『嘘』ってわけでもなさそうに感じた。
(いや、わかるわけないはずだけど……)
そう疑問に思いつつ、大人たちが瓦礫に近づくのを野々野足軽は見守った。