確かにそうなのかも……と野乃野足軽は思った。そしてちょっと自分の力って奴を自覚する。いや、勿論今までだって野乃野足軽はその力を自覚してた筈だ。けど、こうやって人に向かって使って、実践でそれが証明された。それが大きい。つまりは野乃野足軽は簡単に他人を倒す事ができるのだ。その事実。
「間違わないようにしないとな……」
ぼそっと野乃野足軽はそんな事を言った。自分の力を自覚して、そしてそれを間違えて使わないように覚悟をしたみたいだ。
「よし、早く犬たちを開放してやろう」
(待ってください)
(なんだよ?)
野乃野足軽は悪人を倒したら早速犬たちを開放しようと玄関の方へと回り込もうとした。けどそこでアースが待ったをかける。
(油断はいけません。姿を見られずに処理できたんです)
(ああ、最高の結果だ)
(ですが、こいつらは野放しです。そのうち目を覚ますでしょう。そして犬たちがいないことに気づく。飼い主の元に戻されたのもきっと確認するでしょう。そうすると、誰かが自分たちを襲ったと思うはずです)
(報復に来るって言いたいのか?)
(そうならないためにも、まだ慎重な行動が必要です)
アースのその忠告を野乃野足軽はたしかに……と思った。報復なんて来られたら困る。けど姿は見られて無いんだし……とかも思う。
(カメラ……という便利な物が今の時代には有るのでしょう。確かめたほうが良いのでは? それに映ってしまうと、後から確認された時に貴方の姿が見られてしまいますよ)
(それは……まずいな)
アースの言うことは最もだった。カメラなんてのは最近はどこにでもあるし、どこに映ってるのか、わかったものじゃない。個人の家で監視カメラを導入してるところも少なくないだろう。しかもここの家の主は、犯罪を犯してたわけだ。そんな事をやってる奴らが警戒なんてしてないといえるだろうか?
そんなわけないと野乃野足軽は思った。まずは玄関にちょっとだけ顔を出して……とか思ったが、このくらいなら透視で見ればいいかと思って、目を閉じてグググと眼の前の壁と……というか生け垣を透視するように意識する。すると生け垣の先の光景が野乃野足軽の頭に浮かんでくる。
(ある……な)
監視カメラは玄関にあった。更に庭の方へも視線を飛ばす。すると建物の壁に張り付くようにつけられてる監視カメラを発見した。普通に行ったら、この2つのカメラに姿が映ってしまうのは確実だ。
(どうしたら……透明、とかになれるか?)
(出来なくはないですね)
どうやら力を使えば透明人間にだってなれるらしい。さすがはよくわからない不思議な力だ。
(ですが透明化は難易度がそこそこ高いです)
(今の俺には難しいってことか?)
(そうなりますね)
(そうか……)
どうやら今の野乃野足軽には自身を透明化するという力の使い方は難しいらしい。ならどうするのか……野乃野足軽は「うーんうーん」と考える。そしてなんとか一つの方法を思いついた。