パシャリ――
とシャッターを山田奏は切った。その際、勿論だけどシャッター音は消してるし、フラッシュだって消していた。スマホは完全に使いこなしてる今どきの若者だ。最近のスマホの画質はすごい。暗くてもちゃんとキレイに……は流石に街頭一つではならないが、ちゃんと見える写真にはなってる。
けど流石に目深にフードを被ってるから、その奥まではみえない。けどここからだ。たしかに見えないが、スマホを使いこなしてる現代っ子の山田奏はそこから画像補正できるソフトを立ち上げる。そして写真を調整しだす。
明るさを上げたりして、フードの奥の顔を確かめようと山田奏は努力する。一つのソフトでやり過ぎると画質として破綻してしまったときは、更にそれを復元出来るアプリを使って……更に解像度を足すなんて事が出来る様なアプリを更に使って復元、補正を繰り返すと、徐々にその顔が現れていく。
(あと少し、一回で……)
そう思って山田奏は画面に夢中になってた。画像処理をやってるシークバーを見つめててた時、ダン!! と遊具が叩かれたような音がした。
「ひっ――つ」
一瞬声を出しそうになった山田奏はなんとか紙一重でその声を無理矢理飲み込んだ。そして自分の心臓が早鐘のように鳴り響いてるのを全身で感じた。
(バレた?)
そう思った山田奏。汗が……嫌な汗が背中を流れる感覚がある。
(無理だ……これ以上……こんな状況……助けを……)
そう思って山田奏はスマホをみる。そしてどこに電話をかけるのかというと……それはこんなときには友達とかそんな知り合いではない。だって今、山田奏を追いかけてる人物がどんなやつなのかわかんないのだ。危険がある……なら……警察しかなかった。
スマホは緊急事態のときにすぐに緊急通報が出来るようになってる。それを山田奏は覚えてたみたいだ。その為に電源ボタン連続で三回押す必要がある。でもそんなのは簡単だ。親指にちょっと力を入れるだけ。それを三回……それに手が震えてるから、実際もう押してるかもしれない。
それならありがたかった。でも再びダン!! という音に驚いて、スマホを落としてしまった。カツンと遊具の床に落ちた音が響く。もしかしたらとっくに位置はバレてたのかもしれないが、それでもこれで山田奏は完全にバレたと思った。
そしてそれはその通りだった。さっきまではここに近づいてたが、わざわざこの遊具を覗き込む……ようなことしてなかった。けど遊具の穴から足がみえて、体が見えた。そして大きな手が見える。なぜかその手には手袋が……いや軍手がしてあった。まるで指紋を残しておきたくないような……
なにせ今の時期は夜でも冷えてなんて無い。心臓が飛び出そうなほどに鼓動を刻んでる。そして屈んだ体からそのフードに包まれた頭が見えた。そして顔を上げたその奥にはやけに光ってるような目が見えた。
その瞬間、山田奏は何かを叫んで記憶を失ったんだ。